ライヴ・ニューヨーク・リヴィジテッド/ホレス・シルヴァー・クインテット
昨日はバタバタしていてウォーキングもできず。ニュー・リリースに耳を傾ける時間がとれなかったし。今朝は冷たい雨が降っていてお散歩できていないし。なので、今日はちょっと前、10月ごろに出て、ちょいちょいお散歩しながら楽しんでいたものの、ついつい紹介しそびれていたジャズものを軽く触っておきますね。バンドキャンプを通して往年のジャズ音源もろもろを復刻リリースしているエズセティックス/ハットハット・レコードから出たホレス・シルヴァーのライヴ盤です。
ぼくはとにかくホレス・シルヴァーというピアニストが大好きで。ご存じ、ファンキー・ジャズの創始者のひとり。ボビー・ティモンズ、レイ・チャールズらと並んで、ゴスペルの影響をたたえたキャッチーなグルーヴと熱狂をジャズの世界へと持ち込んだ偉人なわけですが。
1950年代半ば、アート・ブレイキーとのツー・トップで牽引した初期ジャズ・メッセンジャーズでの活躍を足がかりに、以降次々と多彩なメンバーたちとグループを組んで、時代時代の空気感に適応したジャズを聞かせ続けてきた。個人的な好みとしては、ブルー・ミッチェル(トランペット)とジュニア・クック(テナー・サックス)という2人の管楽器奏者をフロントにフィーチャーしたクインテットを率いていた1959〜64年のグルーヴがいちばん好きなのだけれど。
その後、カーメル・ジョーンズ(トランペット)とジョー・ヘンダーソン(テナー・サックス)をフロントに迎え入れた1964年以降のパフォーマンスもいい。要するに、例の必殺曲「ソング・フォー・マイ・ファーザー」を生み出したクインテットだけれど。これまた、いつ聞いてもごきげん。
と、そんな1964年に訪れたメンバーチェンジ期のライヴ音源を収めたのが10月にハットハットから出た本作だ。録音順に言うと、最後の2曲、「ザ・トーキョー・ブルース」と「セニョール・ブルース」が1964年6月、ニューヨーク州ロング・アイランドのクラブ“ザ・コ ルク&ビブ”でのライヴ。シルヴァー(ピアノ)、ジョーンズ、ヘンダーソンにテディ・スミス(ベース)、ロジャー・ハンフリーズ(ドラム)というラインアップでの演奏だ。以前、1980年代にエメラルド・レコードから出たLP『ライヴ1964』というアルバムのB面に収められて発掘されていた音源。
で、残りが1990年、同じエメラルド・レコードから出たCD『ザ・ネイティヴズ・アー・レストレス・トゥナイト』で出ていた音源。「ソング・フォー・マイ・ファーザー」「ザ・ネイティヴズ・アー・レストレス・トゥナイト」「ケ・パサ」が1965年4月、ニューヨークの“ザ・ハーフ・ノート”でのライヴ。これもシルヴァー、ジョーンズ、ヘンダーソン、スミス、ハンフリーズというクインテットの演奏だ。
で、「ジ・アフリカン・クイーン」の正・別2ヴァージョンが1966年2月、同じ“ザ・ハーフ・ノート”でのライヴ。こちらはシルヴァー、ヘンダーソン、ハンフリーズはそのまま、ジョーンズに代わってウディ・ショウ(トランペット)、スミスに代わってラリー・リドリー(ベース)という編成のクインテットによるパフォーマンスだ。
痛快で、スピーディで、いかがわしくて、エキゾチック。個人プレイにばかり注目が集まりがちなジャズの世界ではありますが、ホレス・シルヴァー・クインテットというのはいつの時代も各メンバーがお互いの持ち味を活かしながら編み上げた絶妙なバンド・サウンドを聞かせてくれていた。このライヴ・アルバムにもそんな持ち味が充満していて。かっこいい。もちろん各々のソロも充実。シルヴァーのキャッチーでファンキーなプレイはもちろん、やっぱジョーヘンがイケてます。
前述したように全曲何らかの形で既発の発掘ライヴ音源で。音質的にもそんなにいいわけではないけれど。ハットハットならではのリマスタリングで少しだけではあるけれど聞きやすくなった感じ。ともすれば軽く扱われがちなホレス・シルヴァーが、実はとても重要な役割をシーンに対して果たしていたという事実を再検証したブライアン・モートンのライナーもよき。シルヴァーのスピリチュアリティあるいは環境保護主義的な考え方などがいかに時代を先取りしていたかとか、彼がよく他の曲のメロディをソロに引用するそのアプローチはサンプリングの先駆けだったとか。ファンにとってうれしい記述が満載です。
バンドキャンプでは聞けるけれど、Apple MusicとかSpotifyでのストリーミングはないみたい。