Disc Review

Sticking with It / The Dip (Dualtone Records)

スティッキング・ウィズ・イット/ザ・ディップ

本ブログでも機会があるたびに何かと取り上げてきたイーライ“ペイパーボーイ”リードとか、ドゥラン・ジョーンズ&ジ・インディケイションズとか、あるいはザ・マイティ・インペリアルズとか、ザ・トゥルー・ラヴズとか、オルゴンとか、そういったレトロ・ソウル系のごきげんな音楽をこの21世紀に届けれくれる頼もしい連中のひとつ、ザ・ディップの新作。

ルミニアーズ、ショベルズ・アンド・ロープ、エイモス・リー、ガイ・クラークなどのリリースでおなじみ、デュアルトーン・レコードに移籍しての第1弾、フル・アルバムとしては2015年の『ザ・ディップ』、2019年の『デリヴァーズ』に続く通算3作目だ。

本拠地である米ワシントン州シアトルに設立した自分たちのスタジオでのレコーディング。レコーディング作業を引っ張っているのは、ギターのジェイコブ・ラングレンとヴォーカルのトム・エディだ。2019年の初来日時と同じ、ギター+ベース+ドラムという3人のリズム隊に、トランペット+テナー・サックス+バリトン・サックスという3管ホーン・セクション、そしてヴォーカルというキーボードレス編成で。3声のバック・コーラスと、1曲のみストリングス・セクションが参加している。

こぶりなスタジオらしく、その特性なのか、あるいは意図的になのか、リヴァーブなしのむちゃくちゃドライな音像に仕上がっていて。しかもキーボードレスなもんだから、ちょっと音像的に地味な印象を与えるかもしれないけれど。むしろバンドのコアなグルーヴこそを聞いてくれという熱い心意気の表明と受け止めたい。

いきなりオープニング・チューンから3拍子だし。ラストを締めくくるのも3拍子のジャジーなスウィングもの。伝統的な黄金のソウル・グルーヴを現代に継承するというコンセプトからするとちょっと意外な切り口ながら、ここにもチャレンジングな心意気が表われている。もちろん、基本的にはスタックス、ヴォルト、アトランティック、ハイ、ブランズウィックといった往年の名門ソウル・レーベルの味を、ホットに、オーガニックに受け継ぐタイプの曲がずらり。アップものからスロー・グルーヴまで。バラエティ豊かに聞かせてくれる。

来日公演ではかなりインストものの割合が多かったけれど、今回は1曲のみ。あとは歌ものだ。コーラスとの掛け合いもかなりいい。歌詞も定型をきっちり受け継ぎつつ、時代が移っても変わることのない思いみたいなものを綴っていたり。「ヴァケイション」って曲では、キャッチーなR&Bグルーヴの下、“さて、新しい年がやってきた/また新たな12カ月分の家賃のことが頭をよぎる…”とか歌っていて(笑)。やさぐれ気味のユーモア感覚が泣ける。

ジャケットに描かれている、靴で踏んづけちゃったバブルガムと同じ色のカラー・ヴァイナルLPもあり。ゲットするなら断然こっち。彼らのサイトのWEBショップにその写真が載っていて、ちょっとアガった。でも、日本のオンラインCDショップ(Amazon / Tower)とかで売っているのもそれなのかどうか、詳細が記されていないので謎。ピンク盤なら絶対買いだなぁ。ピンク盤しか作ってない気もするんだけど。とりあえずダメもとで買っちゃってみるか…。

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