Disc Review

Backhand Deals / Buzzard Buzzard Buzzard (Communion Records)

バックハンド・ディールズ/バザード・バザード・バザード

一昨年の夏ごろ、10曲入りのEP『ノン・ストップ』をリリースし、一部で熱く迎えられたバザード・バザード・バザード。T.レックスとか、フェイセズとか、デヴィッド・ボウイとか、ビートルズとか、トッド・ラングレンとか、初期スティーリー・ダンとか、1970年代ロックの美学をこの21世紀に踏襲しようとしている、今どき珍しい若人たちって感じで。お古い旧世代ロック・ファンとしてはなんともうれしい気分になったものだけれど。

もともとは、英ウェールズのカーディフ在住のトム・リーズの宅録プロジェクトだったらしい。やがて2016年ごろ、兄弟のエディ・リーズ(ベース)、ザック・ホワイト(ギター)、イーサン・ハースト(ドラム)を迎えて4人組に。2018年にデビュー曲「タブル・デニム・ホップ」を、2020年にオールド・ロック・ファンの記憶をくすぐる絶妙なタイトルの「ジョン・レノン・イズ・マイ・ジーザス・クライスト」を、それぞれシングル・リリース。さらにそれら2曲も含む前述のEP『ノン・ストップ』を出して。

で、いよいよ本作、初のフル・アルバム『バックハンド・ディールズ』の発売にめでたく至った、と。今回は全11曲入りで。前EPより1曲多いだけ。まあ、前EPは短いインタールード2曲含めての10曲だったから、実質3曲増しだけど(笑)。とにかく今回はフル・アルバムという位置づけだ。さあ、コロナ禍も徐々に明けそうだし、いよいよ世界のロック・シーンめがけて本格的な一歩を踏み出す体制が整ってきたぞ、と。そういう感じか。

今回は前EPに比べてぐっとパワー・ポップ方向に寄った印象も。クイーンっぽさというか、ジェリーフィッシュっぽさみたいなものもアップした感じ。スタジオの使い方が上手くなったってことかも。ただその分、ファーストEPの、こう、わちゃわちゃした猥雑な感触がなくなって。それを成長と解釈するか、まとまってきちゃったなと感じるか。その辺は聞く者それぞれ。ぼくは個人的にちょっとだけ寂しい気がします。ちょっとだけね。

これぞ、というキラー・コンテンツ的なコード進行とか胸きゅんメロディとか、そういうのが実はちょっと足りない気もしなくはない。まあ、世代ごとにぐっとくるメロディの感覚とかは違うと思うので、何とも言えないけど。ぼく世代としては正直ちょっと足りない感じではある。

とはいえ。いずれにせよ、21世紀になってもセヴンティーズ・ロックの魅力というか、美学というか、黄金のフォーマットというか、そういったものを新世代の感性の下、きっちり受け継ごうとしているようで。その心意気がうれしい。世代を超えて盛り上がる。応援したくなる。

というわけで、だいぶあったかくなってきたこの2日ほど、お散歩の格好のお供って感じで愛聴してます。

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