Disc Review

Back in Mono / The Courettes (Damaged Goods Records)

バック・イン・モノ/ザ・クーレッツ

ザ・クーレッツ…って読み方でいいのかな。何日か前、ノージくんがnoteと連動してやっている今月の“東京スケバン・プレイリスト”に1曲、リンゴ・スターに捧げた「R.I.N.G.O.」って曲をエントリーしていたごきげんにレトロなガレージ・ロックンロール・リヴァイヴァル・ユニット。その曲を含むアルバムを聞いてみたら、なんだかやけに面白かったので、紹介させてもらいます。

ロネッツのファースト・アルバム『Presenting The Fabulous Ronettes Featuring Veronica』を丸パクリしたようなジャケット・デザインとかアーティスト・クレジットとか、あるいは“Back to Mono”ならぬ“Back in Mono”なるアルバム・タイトルとか、その辺からもよーくわかる通り、まさにゴースト・オヴ・フィル・スペクター! スペクターのプロデュース作品を頂点とする1960年代ガール・グループもののニュアンスを現代に蘇らせた1枚。

といっても、そうした往年のガール・グループがキラキラ放っていたキュートな側面ではなく、スペクター・サウンドの凶悪なエコー感とか、ナチュラル・ディストーション一歩手前の飽和寸前の音圧とか、そういうどこかやばめのロックンロール感覚にスポットを当てた仕上がりで。むちゃくちゃかっこいいです。

きっと日本でもそのスジでは話題になっていたんだろうなぁ。不覚にもぼくはまったくスルーしてしまっていたのだけれど、ブラジル人のフラヴィアとデンマーク人のマーティンというクーリ夫妻によるロックンロール・ユニット。2015年にドイツのインディー・レーベル“サウンズ・オヴ・サブタレイニア”からアルバム『ヒア・アー・ザ・クーレッツ』でデビュー。2017年に10インチLPでライヴ盤を出して。2020年にセカンド・スタジオ・アルバム『ウィー・アー・ザ・クーレッツ』を出して。

で、同年、英インディーズの雄、ダメージド・グッズ・レコードと契約。新型コロナウイルス禍のさなか、シングル「ウォント・ユー! ライク・ア・シガレット」で心機一転、本格デビューを飾って。これがイギリス、デンマークでヘヴィロテされて7インチ・シングル初回分が2週間でソールドアウトに。

勢いに乗って今年、ニュー・シングル「ホップ・ザ・トウィッグ」なる強烈なテケテケものをリリース。これがまた“ロネッツ・ミーツ・ラモーンズ”とか“デュアン・エディ・ミーツ・60sガール・グループ”とか“ガレージ・ミーツ・サーフ”とか、まあ、まったく気づいていなかったぼくが偉そうに言うのもナンですが(笑)、とにかく大評判を呼んだようで。

そんなクーレッツのスタジオ・アルバム第3弾がこれ。「ウォント・ユー…」も「ホップ…」も「R.I.N.G.O.」も含む強力な1枚だ。全曲、共同プロデュースもつとめるセーレン・クリステンセンとクーリ夫妻が共作したあの手この手のオールディーズ調オリジナル。妻のフラヴィアがヴォーカル、ギター、ピアノ。夫のマーティンがドラム、パーカッション。そして、プロデューサーのクリステンセンがキーボード、グロッケンなどを担当している。ベースレス編成なのだけれど、リンク・レイやディック・デイルばりのフラヴィアさんの爆裂ギターがそのあたりを補って余りある感じ。

で、これ、なんと『microstar album』とか『She Got The Blues』とか、ごきげんなポップ・アルバムでおなじみ、マイクロスターの佐藤清喜が日本でミックスしているみたいで。さすがの仕上がりなのだ。アルバム・タイトル通り当然こだわりのモノ・ミックス。モノならではのロックンロール感覚のようなものをきっちり継承し再現した1枚に仕上がっている。佐藤さん、すげえ。スペクターが手がけたフィレス系のガール・グループはもちろん、それ以上にシャングリラスからの影響が色濃い、ちょっと不良なガール・グループ・サウンドの21世紀版というか。

そうそう。「ホップ・ザ・トウィッグ」にはシャングリラスの「リーダー・オヴ・ザ・パック」でおなじみ“ルック・アウト、ルック・アウト、ルック・アウト、ルック・アウト!”ってシャウトも入っているし。「マイ・ワン・アンド・オンリー・ベイビー」や「トゥー・レイト・トゥ・セイ・アイム・ソーリー」にはロネッツばりの“ウォッウォッウォッ…”も入ってるし。もちろん、ドッ・ドドッ・パン!のハル・ブレイン・ビート満載だし。

こりゃ、たまらんです。妻がギター/ヴォーカル、夫がドラムという2人だけの“逆ホワイト・ストライプス”編成でライヴやっている映像とかもYouTubeにけっこうあがっていて。それはそれでものすげーかっこいい。クリステンセンとかを含む“ウォール・オヴ・サウンド・オール・スター・バンド”なるラージ・バンド編成のライヴ映像もあった。そっちもいい。やばいです。最高です。パンデミックが過ぎ去ったら、ぜひ日本にも来てほしい。

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