ジス・イヤーズ・モデル(2021年リマスター)/エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズ
エルヴィス・コステロの最近の話題というと、彼が1978年にリリースしたアルバム『ジス・イヤーズ・モデル』の収録曲のバックトラックに、フアネス、ラ・マリソウル、ルイス・フォンシ、ニナ・ディアス、ラケル・ソフィア、ドラコ・ロサ、フィト・パエス、フランシスカ・ヴァレンズエラ、エンハンブレのルイス・ウンベルト・ナヴェハス、ヒアン・マルコ、ニコール・ジニャーゴ、ジェシー&ジョイ、ホルヘ・ドレクスレルらによるスペイン語ヴォーカルをマッシュアップした、その名も『スパニッシュ・モデル』(Amazon / Tower)なる企画盤が今月リリースされて。それが注目の的になっているのだけれど。
今朝取り上げるのはそっちじゃなく。木曜日ってこともあるで、スロウバック・サーズデイっぽく元になった盤のほうにスポットを当てましょう。エルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズ名義で、前述した通り1978年にリリースされた『ジス・イヤーズ・モデル』。その2021年リマスター・エディションが出た。事情はよくわからないけど、『スパニッシュ・モデル』のリリースに便乗した形なのかな。
コステロにとっては傑作デビュー盤『マイ・エイム・イズ・トゥルー』に続くセカンドながら、デビュー後に結成されたバック・バンド、ジ・アトラクションを率いた名義ではこれが初アルバム。元チリ・ウィリ&ザ・レッドホット・ペッパーズのピート・トーマス(ドラム)、元クイヴァーのブルース・トーマス(ベース)、そしてスティーヴ・ナイーヴ(ピアノ、オルガン)という顔ぶれによるジ・アトラクションズとともにスタジオに入り、ほんの10日ほどで仕上げてしまったという、まさにバンドならではの勢いに満ちた痛快作だ。特にテックス・メックスっぽいオルガンがごきげん。プロデュースは前作に引き続きニック・ロウ。
その後、本当に幅広い音楽性に挑み、すべてを自分色に染め上げてきたコステロだけれど。やはりもっとも魅力的に輝いていたのは、このアルバムの前後の時期かも。ただ、ファンの方ならばご存じの通り、このアルバム、もともとのUKオリジナルLPはA面に「ノー・アクション」「ジス・イヤーズ・ガール」「ザ・ビート」「パンプ・イット・アップ」「リトル・トリガーズ」「ユー・ビロング・トゥ・ミー」、B面に「ハンド・イン・ハンド」「(アイ・ドント・ウォント・トゥ・ゴー・トゥ)チェルシー」「リップ・サービス」「リヴィング・イン・パラダイス」「リップスティック・ヴォーグ」「ナイト・ラリー」という6曲ずつを収めた全12曲入り。
で、そのあと出たUS盤はB面から「チェルシー」と「ナイト・ラリー」を外して、ラストに「レディオ・レディオ」を収めた全11曲入り。日本盤は「ナイト・ラリー」の代わりになんと「ウォッチング・ザ・ディテクティヴ」をぶちこんだ全12曲入り。オーストラリア盤はUK盤に加えてA面ラストに「ウォッチング…」を入れた全13曲入り…みたいなことになっていて。どれ買ったらいいのか、当時ものすごく悩んだものですが。
今回はCD、LP(Amazon / Tower)、ハイレゾで出て。LPはオリジナルUK盤通りの全12曲。CDはそこに「ビッグ・ティアーズ」と「レディオ・レディオ」を加えた全14曲入り。ハイレゾもその14曲。すでに本作のハイレゾは2015年に「レディオ・レディオ」のみ加えた全13曲ものが出ていたけど、今回は14曲入りだ。ぼくはハイレゾで入手しましたー。
ライコディスクとかライノとかヒッポ・セレクトとか、いろいろな再発系レーベルが出したボーナス満載のCDをすでに持っている方は、ずいぶんと収録曲が減った感じもするので改めて買い直すのも複雑な気分かとは思いますが。なかなかパンチのあるリマスターだし、アルバムの元の形がわかりやすい構成だし。まあ、余裕があったら、ね。
ストリーミングだと、なんとヒッポ・セレクトから出たボーナスふんだんな全40曲入りエディションと同じフォーマットのものも配信されていて(Apple Music / Spotify)。これだと、冒頭14曲がCD収録のものと同じ最新2021年リマスター。そこに「クローリング・トゥ・ザ・USA」と「タイニー・ステップス」の2021年リマスターがさらに加わり、以降、ライヴとかデモとかがずらり並ぶ。結局、お得感はこれがいちばんか。ほんと、圧倒的にサブスク時代なんだなぁ。