Disc Review

Peace or Love / Kings of Convenience (Virgin/EMI)

ピース・オア・ラヴ/キングズ・オヴ・コンヴィニエンス

アイリック・ボーとアーランド・オイエ。コーネリアスとのコラボ経験もあるノルウェー出身のアコースティック・ポップ・デュオ、キングス・オヴ・コンヴィニエンスが、2009年の『デクラレイション・オヴ・ディペンデンス』以来12年ぶり、4作目(リミックスを入れると5作目)にあたる新作を届けてくれた。

12年ぶりって(笑)。普通これだけブランクがあると、活動停止→再始動みたいな感じなのかなとも思った。実際のところ、前作のリリース後、オイエの両親が他界したり、21年に及ぶボーの結婚生活に終わりがきたり…私生活で大きな変化に直面したのは確かみたい。ボーもオイエも現在45歳。年齢を重ねるといろいろ、ね。

でも、二人は特に活動を停止したわけではなく、着実に創作活動を続けていたらしい。作っては立ち止まり作っては立ち止まり…を5回くらい繰り返したとのこと。結果、5年にわたり、5つの異なる都市でレコーディングされたこの新作が完成した。

アルバム全体としては全11曲。全長40分弱。さりげなく、ほどよいボリュームではあるけれど、前述したような私生活での出来事も含め、きっと想像を超える様々な逡巡がここには記録されているのだろう。全体を“愛”と“喪失”というテーマが貫く名盤が静かに生まれたという感じ。

アコースティック・ギター2本と、歌声ふたつ。どの曲もそれらを中心に据え、ストリングスやキーボード、ベース、パーカッションなど、最低限のバッキング要素を軽く添えただけのきわめて簡素な音像。しかし、それゆえむしろ無限の広がりと奥行きを感じさせてくれる。そんな得がたい世界観。

時にモダン・フォークのようであり、時にボサノヴァのようであり、時にネオアコのようであり…。ダウナーなシンガー・ソングライター的音世界もあれば、ジャジーなアンサンブルも、ライト・ファンク系のグルーヴも聞ける。で、それらすべてが風通しのいい、ブリージーで、リリカルなイメージを紡ぎ出す、と。相変わらず素敵だ。

2004年のアルバム『アイオット・オン・アン・エンプティ・ストリート』に客演して以来、交流が続いているファイストが今回も2曲にゲスト・ヴォーカルで参加。そのうちの1曲、「ラヴ・イズ・ア・ロンリー・シング」って曲のラスト、アイリック・ボーが“愛は傷み、そして苦しみ/愛は孤独なものにだってなる…”と歌ったのを受けて、ファイストも加わり二人で“でも、一度その魔法を知ってしまうと、誰もそれなしには生きていけない”と締める。けっして感情を過多にこめたパフォーマンスではないけれど、年齢を重ねたことで、以前よりも沁みてくる気がする。ピースかラヴか…というアルバム・タイトルも、この歌詞と重ね合わせると深い。

ナチュラルな音像だから、ハイレゾかアナログ(Amazon / Tower)、買おうかな。限定ホワイト・ヴァイナル(Amazon / Tower)とかあるみたいだし…。カセット(Amazon / Tower)もあるのね。おしゃれね。


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