Disc Review

Way Down in the Rust Bucket / Neil Young & Crazy Horse (Reprise)

ウェイ・ダウン・イン・ザ・ラスト・バケット/ニール・ヤング&クレイジー・ホース

ニール・ヤングの“アーカイヴ・シリーズ”。以前、本ブログでも取り上げた例のCD10枚組特大ボックスセット第2弾『ニール・ヤング・アーカイヴズVol.2:1972–1976』は、そのときも書いた通り、音はすべてハイレゾでゲットできているものの、ブツがまだ届いていなくて。本当に待ち遠しい限りですが。

それを待っている間に、またまた新たなアーカイヴものが出ちゃいました。今回は過去の未発表ライヴ音源を順不同で発掘リリースし続けている“パフォーマンス・シリーズ”の一環。整理番号としては“Volume 11.5”。なんだよ、その半端な番号(笑)。2013年に出た1970年11〜12月のライヴ音源集『ライヴ・アット・ザ・セラー・ドア』に“Volume 2.5”って番号が付けられていたときも思ったことだけれど、計画が雑すぎるだろ(笑)。ニール・ヤングらしいというか。

なんでも聞くところによると、ニールさん、今年は…というか、ほどなく、さらなる“パフォーマンス・シリーズ”のリリースも目論んでいて。1971年、コネチカット州ストラトフォードのシェイクスピア・シスターで収録されたソロ・アコースティック・ライヴの模様を収めた『ヤング・シェイクスピア』って盤。これには“Volume 3.5”が振られる予定だとか。そのうち“4.25”とか“8.75”とかも出てきそうな気がする。どこまで細かく刻んでくるか、楽しみなような、恐ろしいような…。

今回の“Volume 11.5”。録音された順で言うと、アルバム『ジス・ノーツ・フォー・ユー』のリリースに合わせ、ザ・ブルーノーツを率いて行なわれた1987〜88年のツアーの模様を収めた『ブルーノート・カフェ』(パフォーマンス・シリーズ Volume 11。2015年発売)と、1992年、アルバム『ハーヴェスト・ムーン』の収録曲を全部演奏したツアーの模様を収めた『ドリーミン・マン・ライヴ'92』(パフォーマンス・シリーズ Volume 12。2009年発売)との間の時期、1990年11月13日にカリフォルニア州サンタ・クルーズの800席のクラブ《ザ・カタリスト》で行なったライヴの“ほぼ全貌”を記録したものだ。ブートでおなじみだった音源がついにオフィシャル・リリースされた。

ニールさんと一緒にパフォーマンスしているのは、盟友クレイジー・ホース。アルバムで言うと『傷だらけの栄光(Ragged Glory)』をリリースした直後、このアルバムをプロモートする“ラギッド・グローリー・ツアー”に出るにあたってのウォーミング・アップとして限られた観客の前で行なわれたライヴだったらしい。つまり、1991年のステージの模様を収めた最強ライヴ盤『Weld』へと至る直前のクレイジー・ホースの姿ということ。こりゃたまりません。レコーディング作業的にも『Weld』への予行演習的なものがあったのかも。

参加メンバーは、もちろんニール・ヤング(ギター)、フランク“ポンチョ”サムペドロ(ギター)、ビリー・タルボット(ベース)、ラルフ・モリーナ(ドラム)。プロデュースはニールさんとデヴィッド・ブリッグス。3セット+アンコールという長尺の構成で。当然、当時の新作『傷だらけの栄光』の収録曲中心のセットリストになっている。「カントリー・ホーム」「ラヴ・トゥ・バーン」「あの頃の日々(Days That Used to Be)」「ファーマー・ジョン」「オーヴァー・アンド・オーヴァー」「ファッキン・アップ」「マンション・オン・ザ・ヒル」「ラヴ・アンド・オンリー・ラヴ」。『傷だらけの栄光』に収録された全10曲中8曲をここで演奏している。

これらは当然、ライヴ初披露。とともに、『ズマ』の収録曲「デンジャー・バード」もこのときがライヴ初披露だったとか。その『ズマ』からは他に「ドント・クライ・ノー・ティアーズ」「コルテス・ザ・キラー」も演奏。『今宵その夜(Tonight's the Night)』からは「ロール・アナザー・ナンバー」。『アメリカン・スターズ・ン・バーズ』からは「弾丸を噛め(Bite the Bullet)」「ライク・ア・ハリケーン」「ホームグロウン」。『ラスト・ネヴァー・スリープス』からは「セダン・デリヴァリー」。『リアクター』から「サーファー・ジョーと堕天使モウ(Surfer Joe and Moe the Sleaze)」と「ティー・ボーン」。

そして、ぐっと初期に戻って『ニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホース』から「シナモン・ガール」。このアルバムからは当夜、他にも「カウガール・イン・ザ・サンド」も演奏されたのだけれど、収録中、一時的な電力ロスによってマルチ・テープレコーダーが動かなくなった瞬間があったらしく、今回、CDやLPからは外されている。その代わり、録音が欠落した部分を音質の落ちる代替音源で補修する形で、DVDに「カウガール・イン・ザ・サンド」の映像も収められているそうだ。

ところがなーんと! このDVD、残念すぎることに今のところ単体でのリリースはないのだとか。

今回も複数フォーマットでのリリース。基本になっているのが別ジャケット・デザインの2CDパッケージ(Amazon / Tower)。これが全19曲入り。それと同内容の4LPボックス・セット(Amazon / Tower)もある。ストリーミングも同じ全19曲。ハイレゾ音源ダウンロード販売サイトで扱っている高音質ファイルもこの19曲もの。ぼくはこれを30ドルちょいで買いました。で、2CDと4LPを両方詰め込んで、そこにさらに前述「カウガール・イン・ザ・サンド」を含む全20曲入りのDVDを同梱した豪華ボックス(Amazon / Tower)ってのも出ていて。これ買わないと映像は見られない、と。

くそーっ、早まったかなぁ。結局、箱も買わなきゃダメか。NYA(ニール・ヤング・アーカイヴズ)からリンクされているザ・グリーディ・ハンド・ストアで100ドルくらい出してこの箱買えばハイレゾのダウンロードも付いていたみたいだし。もともとぼくはNYAのサブスク会員なのでストリーミングでハイレゾ再生できるんだし。そうすりゃよかった。

まあ、いいや。いずれにせよ、ニール、ポンチョ、ビリー、ラルフという4人が揃ったときのクレイジー・ホース・サウンドはいつの時代も最強だ。ウォーミング・アップ・ライヴだけにけっこうアンサンブルが雑だったり、コーラスとかテキトーだったり。でも、そういうゆるゆるな空気感も含めて、絶対に他のバンドとでは実現し得ないコンビネーションがここにはある。そのことを改めて思い知ることができるライヴ盤だ。ここで初演された「デンジャー・バード」の圧倒的長尺パフォーマンスでおなじみ、1996年のツアーの記録『イヤー・オブ・ホース』にも負けない手応え。燃えるなー。

ちなみに、2CDパッケージのみジャケットのデザインが違う。これも気になるポイントだ。あー、ますます全部入りの箱買わないといけない状況に追い込まれつつ…。国内盤は2CDのみ、前述『ヤング・シェイクスピア』と3月31日に同時発売されるそうです(Amazon / Tower)。国内盤のみSHM−CD仕様。

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