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Disc Review

Stage Fright: 50th Anniversary Super Deluxe Box Set / The Band (Capitol/UME)

ステージ・フライト(50周年記念スーパー・デラックス・エディション)/ザ・バンド

以前も書いた通り、今年は1971年から50年目で。1971年というのは数々のロック名盤が出た年だから。きっと今年はたくさんの50周年記念エディションが出るぞ、と。そう思っていたら。

去年の積み残しというか(笑)。本来ならば去年のうちに出ていなきゃいけなかったごっつい50周年記念エディションが、ちょいと遅れて出ました。1971年ものだけでも大変そうなのに、1970年ものもまだあったか。一層あわあわしてしまう1年になりそうだ。というわけで、『ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク』『ザ・バンド(ブラウン・アルバム)』に続く、ザ・バンドの50周年記念シリーズ第3弾。そう。『ステージ・フライト』の登場ですよ。

オリジナル・リリースは1970年8月。なので、きっと去年のうちに出しておきたかったのだろうなとお察ししますが。仕方ない。いつ終わるとも知れないパンデミックが進行中。今年にちょい食い込んでのリリースとあいなった。でも、内容はばっちり。前2作同様、これまたとてつもなく充実の仕上がりで。大いに盛り上がる。

今回もCD版、LP版、両者の混合豪華版など、複数フォーマットでの発売。が、ケチなこと言ってはいられない。狙い目はずばり2CD+ブルーレイ+1LP+7インチ・シングルの豪華変則5枚組『ステージ・フライト50周年記念スーパー・デラックス・エディション』だ。

今回も基本となるコンテンツは、前2作同様、現在最高峰のエンジニアのひとり、ボブ・クリアマウンテンがオリジナル・マルチトラック・テープから丁寧にリミックスしたニュー・ヴァージョン。やはりオリジナル・ミックスの感触を尊重しつつも、定位とかけっこう大胆に調整しながら、ぐっと太くタイトにサウンドをブラッシュアップさせている。賛否いろいろ分かれそうではありますが、これはこれで素晴らしい。

このアルバムは1970年の5月から6月にかけて、当時の彼らの本拠地だったニューヨーク郊外ウッドストックにあるホール“ウッドストック・プレイハウス”をスタジオ代わりに使って、今どきにも通じる無観客状態で、ほぼ一発録りに近い態勢でライヴ録音されたものだ。当時、エンジニアリングを担当したのはトッド・ラングレン。

で、録音終了後、ザ・バンドはジャニス・ジョプリン、グレイトフル・デッド、バディ・ガイ、フライング・ブリトー・ブラザーズらと“フェスティヴァル・エクスプレス・ツアー”へ。メンバーが不在だったため、アルバムのミックス作業はトッドが単身ロンドンへと渡り、グリン・ジョンズとともに行なっている。ロビー・ロバートソンは前2作のときのように自らミックスに立ち会うことができなかった。そのせいもあって、ロビー的にはいろいろ心残りもあったアルバムなのだとか。そのあたりのもやもやを、ロビーは今回、クリアマウンテンとの作業で半世紀を経て解消したわけだ。

しかも、この『ステージ・フライト』というアルバムはもともと別の曲順が想定されていた。というのも、ザ・バンドの場合、アルバム・デビュー直後までは他のメンバーも曲作りにそこそこ積極的に関わっていたものの、このアルバムが出るころには新たなレパートリーを書き下ろすのがほぼロビーひとりになってしまっていた。が、ロビーとしてはその状況に納得がいかなかった。周囲からロビーのワン・マン・バンド的に見られることにも抵抗があった。そのため、アルバムのオープニングにまずリヴォン・ヘルムとの共作による「ストロベリー・ワイン」を置き、次にリチャード・マニュエルとの共作曲「スリーピング」を置いた。つまり、ぼくたちがこれまで慣れ親しんできた『ステージ・フライト』の曲順というのは、他メンバーが曲作りに絡んだこの2曲を目立たせるためにロビーが配慮したものだったらしい。

でも、今回はあえて当初計画されていた曲順に並べ替えられた。リヴォンもリチャードも他界してしまっている今だけに、なんとも微妙な感じではありますが。まあ、それもまたロビーらしいか…。いきなり「WSウォルコット・メディシン・ショー」でスタートして、「ザ・シェイプ・アイム・イン」「ダニエル・アンド・ザ・セイクリッド・ハープ」「ステージ・フライト」「うわさ(ザ・ルーマー)」と続く。これが当初ロビーが想定していたA面の流れ。全曲、ロビーが単独で書き下ろした作品だ。

B面は「タイム・トゥ・キル」「ジャスト・アナザー・ホイッスル・ストップ」「オール・ラ・グローリー」「ストロベリー・ワイン」「スリーピング」。リヴォンやリチャード絡みの3曲は全部こちらへ。というわけで、なんとも複雑ではあるけれど、ものすごく新鮮でもある。『ステージ・フライト』を新たな視点から味わい直せるのは確かだ。「スリーピング」はこの位置がいいっすね、断然。

『…スーパー・デラックス・エディション』のCD1には、このニュー・リミックス&曲順変更版の『ステージ・フライト』がまず冒頭に並んでいる。それに続いて「ストロベリー・ワイン」と「スリーピング」の別ヴァージョン。で、さらに前述フェスティヴァル・エクスプレス・ツアーで訪れたカナダのカルガリーのホテルの一室で、ロビー、リック・ダンコ、リチャード・マニュエルが繰り広げたジャムの様子をツアー・カメラマンのジョン・シールが録音した音源が7トラック追加されている。新曲だった「WSウォルコット・メディシン・ショー」とかもやっているけれど、他にも「ゲット・アップ・ジェイク」とか、ヒューイ・スミスやボ・ディドリーのカヴァーとか、即興ブルースとか…。貴重だ。

で、CD2には1971年、英ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行なわれたコンサートの模様が記録されている。これがやばい。オープニング・チューンの「ザ・シェイプ・アイム・イン」から、いきなりむちゃくちゃかっこいい。スタジオ・ヴァージョンよりすごい。完璧。ブートレッグ・ファンの間でも、彼らのライヴの中で最良のひとつと言われているパフォーマンスだ。やっぱりザ・バンドは叩き上げのライヴ・バンドだったんだなぁと改めて思い知る。演奏、ヴォーカル、全員のすべてがすごいけど、中でも特にガース・ハドソンがすごいな。

思えば、まだ彼らがザ・ホークスと名乗ってボブ・ディランのバック・バンドをつとめていたころ、あの伝説的な罵声を浴びせられた忌まわしき英国ツアーを経験していて。それから5年後。ディランとのツアーでも訪れた象徴的な会場で、しかし今度は熱狂的な歓声を浴びながら充実しまくりの演奏を展開するザ・バンドの姿がここに記録されていて。泣けてくる。もちろん「ザ・ウェイト」「キング・ハーヴェスト」「アイ・シャル・ビー・リリースト」「アップ・オン・クリップル・クリーク」「オールド・ディクシー・ダウン」「チェスト・フィーヴァー」「ラグ・ママ・ラグ」など、『ステージ・フライト』収録曲以外の初期代表曲も満載だ。ホーン・セクションとかは入っていないけど、『ロック・オヴ・エイジズ』のときよりいい演奏かも。ミックスがいいおかげかもしれないけど。

ブルーレイには新曲順によるアルバム本編、ボーナス・トラック、ライヴ音源のクリアマウンテンによる5.1サラウンド・ミックスとハイレゾ・ステレオ・ミックスを収録。LPはアルバム本編のニュー・リミックス。さらにもう1枚、「タイム・トゥ・キル」と「ザ・シェイプ・アイム・イン」をカップリングにした7インチ・シングルも付く。こちらの音もクリアマウンテン・ニュー・ミックス。ジャケットなどは1971年のスペイン盤シングルの復刻だ。いつも言っていることだけど、ブルーレイにはきっとまだ曲数入りそうだから、オリジナル・ミックス/オリジナル曲順の最新リマスター版とかも入れてくれればいいのになぁ…。ま、それはこれまでにハイレゾ版も含めていろいろ再発されているから、そっちで聞け、と。そういうことか。

その他、CD1とCD2のみで構成された2CDデラックス・エディション(Amazon / Tower)もある。ストリーミングもこの2CDと同じ選曲。輸入盤としては180グラムのブラック・ヴァイナル(Amazon / Tower)および限定版カラー・ヴァイナル(Universal Music Store)も。

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