ロンドン1975年11月24日/ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンド
本ブログの定番アイテム、公式ライヴ・アーカイヴ・サイト“Live.BruceSpringsteen.Net”で独占販売されているブルース・スプリングスティーンの過去ライヴ音源発掘シリーズですが。
最新リリースは初期もの。1975年の音源だ。Live.BruceSpringsteen.Netでの1975年音源というと、同年10月の米ロサンゼルスのザ・ロキシー公演と、同年12月のペンシルヴェニアのタワー・シアター公演が出ていたけれど。今回は両者の中間、11月24日の英国ロンドン、ハマースミス・オデオン出演時の音源だ。やばい。
1975年のハマースミス・オデオン公演というと、2005年に編纂されたボックスセット『明日なき暴走~30th Anniversary Edition』の同梱DVDに映像として収められた同年11月18日のものがおなじみだろう。スプリングスティーンにとって初の海外公演。英BBCによって撮影され、当時一部が番組で使用されただけでこれまでお蔵入りしていた白熱のステージ、2時間9分の全長版。翌年、CDとしても『ハマースミス・オデオン’75』というタイトルで単体リリースされたっけ。
スプリングスティーンはその後、21日にストックホルム、23日にアムステルダムでライヴして、24日に再びロンドンへ。改めてハマースミス・オデオンのステージに立った。短い期間ながら3個所4回にわたる初のヨーロッパ・ツアーを成功させたわけだけれど。その最終公演の模様が今回、ついにオフィシャル・リリースされたわけだ。さっそく今回も公式サイトでハイレゾ音源25ドルをダウンロード購入しちゃいましたよー。
1975年というと、スプリングスティーンが必殺のサード・アルバム『明日なき暴走(Born To Run)』をリリースした年。彼が米ロック・シーンの新たなヒーローとして注目されるホットな存在に上り詰めようとしているころだ。そんな時期、アルバム『明日なき暴走』の発売に少しだけ先駆けて、7月20日、ロードアイランド州プロヴィデンス公演から怒濤の“ボーン・トゥ・ラン・ツアー”がスタートして。そのまま暮れまでほぼ休みなし。想像を絶するハード・スケジュールのもと、スプリングスティーンとEストリート・バンドは急速に一体感を身につけていった。
過去、何回もメンバーチェンジを繰り返してきたスプリングスティーンのバンドではあったものの、前1974年、クラレンス・クレモンズ(サックス)、ダニー・フェデリチ(オルガン)、ギャリー・タレント(ベース)、ロイ・ビタン(ピアノ)、マックス・ワインバーグ(ドラム)という顔ぶれに落ち着き、ついに自らを“Eストリート・バンド”と名乗るようになった。そこへ、このツアーからギタリストのスティーヴ・ヴァン・ザントが正式加入。黄金のEストリート・バンドのラインアップが完成した。
そんな中で行なわれたのが1975年11月のヨーロッパ・ツアーだったわけで。もう右肩上がりの勢い満点。まあ、スプリングスティーン自身も回想しているように、このとき、レコード会社による過剰な前宣伝にメンバーの誰もが疑心暗鬼になっていたらしく。若さゆえのピュアすぎる苛立ちにも満ちた初海外公演だったようだけれど。しかし、いずれにせよ、極限まで緊張感をみなぎらせた彼らはとてつもなくスリリングな演奏を繰り広げた。そんな様子が今回の11月24日の演奏にもしっかり記録されている。
オープニングの「涙のサンダー・ロード(Thunder Road)」は11月18日の『ハマースミス・オデオン’75』同様、ロイ・ビタンのピアノだけをバックにスプリングスティーンがハーモニカ吹きながら歌うスロー・ヴァージョン。「ロザリータ」は中盤のメンバー紹介のところに「シャフトのテーマ(Theme From Shaft)」が顔を出すパターン。「おまえのために(For You)」はソロ・ピアノ・ヴァージョン。
その他、『ハマースミス・オデオン’75』との違いに軽く触れておくと。「Eストリート・シャッフル〜ハヴィング・ア・パーティ」の長尺ジャムが演奏されているところが、こちらではマンフレッド・マンの「プリティ・フラミンゴ」のドラマティックなカヴァーに変更されている。続いて演奏される「成長するってこと(Growin’ Up)」もこのときがヨーロッパ初披露だったらしい。
あと、『ハマースミス・オデオン’75』の「キティーズ・バック」のところが、やはりマンフレッド・マンの「シャララ」のカヴァーに差し替えられていて。ミッチ・ライダーの「デトロイト・メドレー」に突入する前に、エルヴィス・プレスリーの「思い出の指環(Wear My Ring Around Your Neck)」がぶちこまれていて。ゲイリー・US・ボンズの「真夜中のロック・パーティ(Quarter to Three)」の前にサーチャーズの「ウォーク・イン・ザ・ルーム(When You Walk In The Room)」が入っていて…。
さらにラストにカヴァー3曲、「ツイスト・アンド・シャウト」「キャロル」「リトル・クイーニー」が追加されているという、全長2時間30分超。まじ、このときの若きスプリングスティーン&Eストリート・バンドのライヴを生で体験してみたかった。悔しいなぁ。