Disc Review

The SMiLE Sessions (Deluxe Edition 2CD) / The Beach Boys (Capitol)

SMiLE

ザ・スマイル・セッションズ(2CD)/ザ・ビーチ・ボーイズ

案の定、この時期にプログを更新したのに、なぜ『スマイル』のことを書かないんだというメールをちらほらいただきましたが(笑)。『ミュージック・マガジン』とか、間もなく出る『レコード・コレクターズ』とかにいろいろ書かせてもらいましたので、内容に関する詳しいことはそちらを読んでやってください。

1枚もの、2枚もの、CD5枚+LP2枚+シングル2枚のコレクターズ・ボックス…と、フォーマットがいくつかあって、どれを買えばいいの?という質問がいちばん多いのだけれど、これも『ミュージック・マガジン』の「コンパクト・ディスカヴァリー」のページに書かせていただいた通り。理想は箱。ビーチ・ボーイズ・マニアには必須。そんなマニアでもないし、だいいち値段がなぁ…と感じる方なら無理せず2枚組デラックス・エディション。そんな感じじゃないでしょうか。てことで、今回ジャケ写クリックで飛ぶアマゾンのページは2枚組のとこにしときました。曲目リストだけなぜか3枚組になってますが(笑)。

これまた『ミュージック・マガジン』にも書いた通り、今回のビーチ・ボーイズ版『スマイル』の場合、ディスク1のトラック1「アワ・プレイヤー」から19「グッド・ヴァイブレーションズ」まで、というのが一応、本編ってことになるわけだけど。これはあくまでも2004年にブライアン・ウィルソンがソロ名義で完成させた『ブライアン・ウィルソン・プレゼンツ・スマイル』のスピンオフ的存在で。けっして1967年当時ブライアンが思い描いていた『スマイル』の形ではない、と。これは忘れちゃいけないポイント。そもそも、当時ブライアンは『スマイル』の最終的な完成図を描けないまま、ゴールのない試行錯誤を手探り状態で続けていたわけで。

なので、今回の主役はあくまでもそれ以外の、膨大なスタジオ・セッション音源のほう。だから、それがいちばんふんだんに入っている箱が最高なわけだけど。でも、2枚組デラックス・エディションのディスク2は、箱のほうとはまるで違う内容で。箱のアナログ・シングルの音源がCD化されて入っていたり、セッション音源に独自のエディットがほどこされていたり。箱を買ったからといって油断はできないややこしい仕様だ。そういえば、アナログLPにもそこにしか入っていないステレオ・リミックス・ヴァージョンが何曲かあったりして。これはCDには一切含まれていない。全部入りのデジタル・エディション、作ってほしいです。まじに。

ちなみに、光栄なことに国内盤用のライナーを書かせていただいていて。全フォーマットにぼくの文章も載ってます。が、実は、箱に関してはセッション音源含む全音源についてひとつずつ曲目解説したいと思っていたものの、それやるととんでもない文章量になるので、輸入盤に日本語ブックレットを添付する仕様の今回のボックスでそれをやるのはちょっと現実的じゃない、と。そう言われて思いとどまりました。語り残したことは今月末のCRTで、ね(笑)。

ぼくが今回書かせてもらったライナーに限って言えば、実は2枚組のために書いたものが、全曲解説をCD2枚分しているぶん、いちばん長いです。1枚ものと箱はほぼ同じ。内容が共通しているディスク1についてのみ書かせてもらっています。まあ、箱のブックレットに関しては、ぼくの書いたライナーなどほんの添え物で。充実した英文ブックレットの訳こそが目玉ですから。

いずれにせよ、今回のビーチ・ボーイズ版『スマイル』、ついに出たってことで買って安心できるものではなく、ここからようやく本格的な探求が始まる、そのスタート地点となるべきものである、と。また始まるのかよ…って突っ込まれそうですが(笑)。また始めますよ、少なくともぼくは。山と積まれた『スマイル』関連のブートレッグ群とは決定的に違う、音質の良さもあるし。お墨付き感も強いので、これまでみたいにいけない研究に没頭しているような後ろめたさもないし(笑)。

あ、それでも、いまだブートでしか聞けない音源もないわけじゃなくて。ここが困ったところ。ブートで聞いたことがなかった音源もあるけれど、ブートでしか聞けない音源もないわけじゃない。うれしいような、悲しいような…。

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