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Disc Review

Reunions / Jason Isbell & The 400 Unit (Thirty Tigers/Southeastern Records)

リユニオンズ/ジェイソン・イズベル&ザ・400・ユニット

今年の1月、まだ新型コロナ禍が本格的に世の中を揺るがす直前の時期、ビルボード東京で待望の来日公演を行なってくれたアメリカーナ・シーン期待の星、ジェイソン・イズベル。自ら奏でるアコースティック・ギターと、アマンダ・シャイアズのフィドルだけをバックにした夫婦デュオ形式の弾き語りライヴだったけれど、ものすげーよかった。まじ感動した。

むちゃくちゃシンプルな編成ゆえ、むしろイズベルの歌の力というか、ストーリーテラーとしての天性というか、そういうものを改めて思い知らされた夜だった。曲の良さも再確認できたし。イズベルのバンド、ザ・400ユニッツのメンバーでもあり、ハイウィメンの一員でもあるアマンダさんがまたなんとも魅力的だったし。ものすごくお得感のあったライヴ。ああ、一日も早く、またああいう形でごきげんな生演奏を堪能できる日々が戻ってきてほしいものです。

アラバマ州出身ということで、現地、マッスル・ショールズのデヴィッド・フッドの紹介でフェイム・スタジオとソングライター契約を結んだことでプロの音楽家としてのキャリアをスタート。その後、デヴィッド・フッドの息子、パターソンのバンド、ドライヴ・バイ・トラッカーズに加入…。

と、そのあたりのキャリアを巡る興味深い話を天辰保文さんが引き出して下さったインタビュー記事が、ぼくが編集長をつとめるオンライン音楽雑誌『エリス』の最新29号に掲載されている。メールアドレスを登録するだけで無料でお読みいただけるので、ぜひチェックしてみて下さい。

で、そのインタビューの中でもちらっとリリースが予告されていた新作アルバムが出た、と。今朝はそういう話です。プロデュースはグラミーを受賞した前作『ザ・ナッシュヴィル・サウンド』など直近3作品に引き続き、盟友デイヴ・コブが手がけている。前作同様、ザ・400ユニッツを率いての1枚。レコーディングはナッシュヴィルの伝説的なRCAスタジオAで行なわれた。

来日公演でも演奏していた曲が、たぶん3曲、んー、ちょっとよく覚えていないけれど、少なくとも2曲。「オーヴァーシーズ」ってやつと「セイント・ピーターズ・オートグラフ」ってやつを来日時には新曲として披露してくれていたはず。あと、本盤のラストを締めくくる、娘への思いを綴った泣けるカントリー・バラード「レッティング・ハー・ゴー」もやった気がするけど。自信ないです。勘違いかも(笑)。

ともあれ、ライヴでは弾き語りという形だったそれらの曲もバンド・サウンドへとアップグレードされ、ジョン・プラインやブルース・スプリングスティーンと並び称されるストーリーテラーとしてのイズベルの存在感がまた別ベクトルから輝いている感じ。曲作りの面からも、たとえば「リヴァー」という曲とか、川の流れに癒やされている男の歌かと思いきや、曲が進むにつれて徐々に主人公が犯した罪が浮き彫りにされてきて。もう、まるでランディ・ニューマンのような展開。優れた短編小説を読んでいる気分になれる。

十代半ばのころの辛く切ない記憶とほのかな夢とを淡々と綴った「ドリームシクル」という曲も泣けた。夏の日、芝生、アイスキャンディ、校庭、新しいスニーカー。あと4年で18歳。きっと新しい街で自由になれる。そうしたら、きっとまた会えるから…。

タイトルの“リユニオン”というのは、この世の中から失われてしまったものへの思いとか、体験したことのないヴァーチャルな記憶とか、過去の自分の過ちとか、そうした様々なものとの“再会”という意味合いだそうで。アルコールに溺れていた自身を見つめ直す「イット・ゲッツ・イージアー」なんて曲も。ぐいぐい上り調子の今、あえて自らの足下を見つめ直すという、次なるステップに向けての器のでかさがにじみ出ている。

サウンド的には過去イチ、ロックっぽい仕上がりかも。往年のトム・ペティあたりのイメージとふとダブる感触も。もちろんバンド・メンバーのひとりとしてアマンダさんも演奏にコーラスに大活躍。デヴィッド・クロスビー、ジェイ・ブキャナンらもコーラスでゲスト参加している。

まっすぐ、超ストレートな立ち姿ではあるけれど。これもまたひとつのアメリカン・ロックの頼もしい現在形だ。リモートで、アマンダさんと70分くらいの無観客リリース・コンサートというか、Zoomパーティみたいなやつを披露してくれていて。アルバムの弾き語りヴァージョンもなかなか。これはこれで感動ものだった。売れるまでライヴ会場はいつもこんな雰囲気だったなぁ…的な冒頭のMCが笑えるような笑えないような(笑)。けど。やっぱ、バンド編成でも見たいなぁ。できうることなら、もちろん生で。

もろもろの一日も早い収束/終息を祈りつつ…。

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© 2020 Kenta Hagiwara