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The Individualist Tour / Todd Rundgren (May 22, 2019 at Sumida Triphony Hall, Tokyo, Japan)

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ジ・インディヴィジュアリスト・ツアー/トッド・ラングレン(2019年5月22日、東京・すみだトリフォニーホール)

先日のボズ・スキャッグスといい、昨夜のトッド・ラングレンといい、ベテラン音楽家たちが長年にわたる自らのキャリアにまっすぐ対峙し、いっさい照れたり、恥じたりすることなく、過去生み出した傑作曲をぼくたち観客に全力で届けてくれる姿というのは気持ちがいい。ファンとしても誇らしい。

来月71歳を迎えるトッドは、去年の暮れ、波乱に満ち満ちたこれまでの歩みを綴った自伝本“The Individualist: Digressions, Dreams and Dissertations”(“個人主義者:逸脱、夢、そして論説”)を刊行。今年の4月からはドイツを皮切りに、その自伝の内容を反映したワールド・ツアー“ジ・インディヴィジュアリスト・ツアー”に突入した。その後、全欧各地、全米各地を経て、締めくくりとして行なわれたのが5月22日の東京・すみだトリフォニーホールと23日の大阪・NHK大阪ホールという2回の来日公演だ。

まだ今夜、これから大阪公演があるので、そちらをご覧になる上でネタバレはいやだ、という方は気をつけてください。できるだけお邪魔にならないよう、演奏曲目のネタバレはブログ後半に固めて、とりあえず前半のほうはできるだけざっくり、ぼんやり、書くよう努力しますが。とにかく…。

最高に楽しかった!

「去年出した本は俺についてのものだ。そして、このツアーはその本についてのもの。つまり、このツアーは俺についてのものだ」

ずいぶんと持って回った、いかにもトッドらしい言い方ではあったけれど、コンサート序盤でトッドが口にしたそんなMCの通り、まさに彼の半世紀に及ぶ歩みを集大成するかのようなセットリスト。ユートピアとして、あるいはソロとして、様々な形態で何度も来日してくれているトッドだけれど。今回がいちばん真っ正直というか、いい意味でひねりなしというか、痛快なまでにポップなアプローチを繰り広げてくれた。

途中、休憩を挟んでの2部構成。ファースト・セットのほうが60〜70年代の代表曲集という感じで。自伝にリンクする形で、ほぼ年代順に、あの曲やらこの曲やら、もうめくるめく展開。先日紹介したコンプリート・シングル・コンピともがっちりリンクするようなステージだった。盟友カシム・サルトンを筆頭に名うてが勢揃いしたバンドも、パワー・ポップからブルー・アイド・ソウル、プログレ、サイケデリアまで雄大に広がるトッドの音楽性をがっちりサポート。カシムがいるとコーラスもユートピアっぽくなって、ごきげんだ。

トッドの歌声も、若いころに比べるとずいぶん太くはなったけれど、変わらず力強い。キーボードを音作りの核に据えた楽曲を披露するときは演奏をバンドにまかせてハンドマイク状態に。そして、ステージを右に左に…。ダンスというか、身振りというか、切れのいい動きも70歳とは思えぬ躍動を伝えてくれた。かと思うと、「こいつはキーボードが嫌いなんだよね」みたいなことを言いながらギターを手にして、「大丈夫だよ、相棒。俺はいつでもお前と一緒さ」とハードでブルージーな演奏をぶちかましたり。いやー、かっこよかった。トランスミッターが外れたり、シールドがひっかかったり、ごたごたした局面もあったけれど、そんなトラブルも含めてロック・ギタリストとしてのトッドが楽しめた。セカンド・セットでは弦も切っていたっけ。お若い!

ステージの背景にはスクリーンが設置され、曲に合わせてさまざまな映像が映し出されるのだが、ファースト・セットの基調となっていたのは『サムシング/エニシング』のダブジャケの内側の写真、ギターを抱えて手を広げた若きトッドのかっこいい後ろ姿。その画像がスクリーンにえんえん映し出されていて、それが曲ごとにカラフルかつイマジネイティヴに変化していく。70年代のトッドを象徴するこの写真を全体のトーンを決定するイメージとしてあえて選んだところも、自分のキャリアに対してものすごく冷静な眼差しで接している感触。やはり自伝出版の効能なのだろう。

休憩後、会場ロビーで撮影されたと思われるファンの質問ビデオに答える形でのQ&Aコーナーを挟んで、セカンド・セットへ。こちらは超キャッチーだったファースト・セットに比べてぐっとマニアックな流れ。トッドのアヴァン・ジャズっぽさとか、エレクトロニック好きっぽい個性の片鱗とかもほのかに炸裂したりしていた。ファーストのほうは、全世界各地、1〜2曲ずつ違う程度で基本形はほぼ不変の内容だったようだが、セカンドのほうは日替わり色が強かったらしい。こうした2部構成もいかにもトッドらしい。スクリーンの映像もセカンド・セットでは『ジ・インディヴィジュアリスト』のヴィジュアルが基調だった。

ポップスの本質、トッドの本質——(セットリストあり。ネタバレ注意)

というわけで、ここからは具体的な曲目にも軽く触れながら書かせてもらいますが。ファースト・セットの冒頭、いきなり1974年のアルバム『未来から来たトッド』からの「君は知っている (I Think You Know)」で、ふわっとスタート。微妙なところから来るなぁ…と思っていたら、次、いきなり1960年代後半、ナッズ時代の「オープン・マイ・アイズ」と「ハロー・イッツ・ミー」という2大ヒットを連発。一気に客席のテンションを高めてくれた。

で、そのあとのMCがぼくにとって昨夜いちばん印象的なものだった。詳細には覚えていないのだけれど、要するに、67年とか68年とか、サマー・オヴ・ラヴの時代、何についての歌を書けばいいのか悩んでいた、と。ベトナム戦争について書けばいいのか、やったこともないドラッグについて書けばいいのか。でも、俺は相変わらずハイスクール時代にフラれた女の子のことで頭がいっぱい。それでわかったんだ。何の歌を書けばいいかわからなかったら、女の子についての歌を書けばいいのさ…みたいな。まあ、ぼくの英語力と記憶力には思いきり限界があるので(笑)、実際にはどうだったか正確なところはわからないのだけれど。なんか、そんなこと話して、1970年、ソロ名義での初ヒット「ウィ・ガッタ・ゲット・ユー・ア・ウーマン」へ。

このくだりは、まあ、月並みっちゃ月並みな表現にも思えるものの、誰あろうトッドが口にしたものだけに、なんだかぐっと来た。トッド自身の、そしてポップ・ミュージックの本質だなぁと実感できた。そのあとのコンサート全体の意味合いがより色鮮やかなものになった。

やー、まじ、楽しかった。きっといるだろうな、と思った人たちがみんな客席に詰めかけていた光景も含めて、やっぱトッドはすげえな、と、大いに盛り上がった夜でした。

1st Set:
1. I Think You Know
2. Open My Eyes
3. Hello It's Me
4. We Gotta Get You a Woman
5. I Saw the Light
6. Black Maria
7. An Elpee's Worth of Toons
8. Sometimes I Don't Know What to Feel
9. Too Far Gone
10. A Dream Goes on Forever
11. The Death of Rock and Roll
12. Can We Still Be Friends
13. Real Man
14. Love of the Common Man
15. Couldn't I Just Tell You
16. Fair Warning

2nd Set:
17. The Individualist
18. Black and White
19. I Don't Want to Tie You Down
20. Determination
21. Cliché
22. Drive

Encore:
23. The Want of a Nail

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