ミュージコロジー/プリンス
ストリーミングはされていたものの、フィジカルとしてはなぜかすべて廃盤になっていた1995年以降のプリンスのオリジナル・アルバム群の再発プロジェクト“LOVE 4EVER”がスタート。その第一弾として、『ミュージコロジー』(2004年)、『3121』(2006年)、『プラネット・アース~地球の神秘~』(2007年)がCDおよびアナログLPで復活した。めでたい。てことで、今日はリリース15周年を迎える『ミュージコロジー』をピックアップします。
振り返ってみれば、1995年にワーナーとの契約が切れて以来のプリンスの活動はひたすらハードコアだった。いきなり3枚組を出してみたり、ジャズに傾倒してみたり。それもそれですごいけど、これからどうなっていっちゃうんだろうなぁ…と、ぼくも当時少しだけ腰を引き気味に様子をうかがっていたものだ。
が、彼にとって最後の来日公演となってしまった2002年のライヴを体験したとき、改めて確信した。アヴァンギャルドで実験的な持ち味ともども、彼のキャッチーで、ポップで、ファンキーな魅力はそのときもなお絶品。まったく失われていなかった。2004年のグラミー賞やロックの殿堂入り授賞式でのごきげんなパフォーマンスもいい証拠だった。
それら快調なパフォーマンスを受けてリリースされ、久々にポップ・シーンど真ん中へと返り咲く好調なセールスを記録した傑作が『ミュージコロジー』だ。1999年、アリスタを通じて一度、黄金期のプリンス・サウンドの再生を図ったこともあったけれど、本気度はこちらのほうが断然上。偉大なR&Bの先達への敬意と愛情がみなぎる、クールで、ファンキーで、ポップな快作だった。
この人の場合、その気になればどこまででも深く深く凝りまくった音作りができるはず。が、深入りしすぎる一歩手前で程よく抑えた点が本作の勝因だったと思う。CDリリース前にライヴ会場で配布したり、インターネットを通じて全曲先行発売したり、今では当たり前になった方法論を15年前にいち早く的確に取り入れてみせた姿勢もお見事。プロデュース感覚も冴えまくっていた。
『ミュージコロジー』は翌年、グラミー賞2部門を受賞。同名コンサート・ツアーも147万人を動員。プリンスの目論見は見事的中した。孤高の天才がちょっとだけ社会性を発揮した傑作という感じか。今聞いても、何の不満もなくかっこいい。