カミング・ホーム/リオン・ブリッジズ
まあ、レトロ・ソウル系ってことになるのかな。音楽誌やら新聞やら、イギリスを中心に各所でやけに話題を集めているテキサス出身、25歳の新人シンガー。デビュー・アルバムが出た。フラゲしました。曲調、音像、楽器、録音方法、見た目、動き、すべてかなり戦略的に往年のソウル路線を再現しようと目論んでいるようで。面白いっちゃ面白い。
ただ、けっこう詰めは甘いというか。コアな60年代ソウル・マニアとかからすると、バカにすんなよ…という声が上がるかも。歌声も細いし。ピッチも甘いし。この人自体がどのくらいの才能と柔軟さを持っているのかに関しては微妙。未知数だ。オースティンのサイケ/ガレージ系ロック・バンド、ホワイト・デニムのメンバーが絡んでいるらしきサウンド作りも、あまり細部にまではこだわらない、ゆるめの仕上がり。
ただ、これでこの人がバッキバキにシャウト・ヴォーカルを繰り出す歌唱力自慢タイプだったら逆に世界観がウソっぽくなりそうなのも事実。全編、声を張らずに軽く歌っていることで、どこかシンガー・ソングライターのアルバムっぽいリアルな感触も生まれていて。これはこれで“あり”なのかも。“レトロ・ソウルの真打ち登場”みたいな売り文句には納得いかないけど、とりあえず四の五の言わず、注目の個性として戦略に乗っかってしばらく楽しんでみます。買っちゃったし(笑)。