Disc Review

The Complete Motown Singles, Vol. 11A: 1971 / Various Artists (Hip-O Select)

ザ・コンプリート・モータウン・シングルズ vol. 11A〜1971

ヒッポセレクトが怒濤の勢いで出し続けているモータウン・レコードのコンプリート・シングルズ・シリーズ。ローカル・ヴァージョンも、プロモ・ヴァージョンも、とにかくレコード番号が一緒だろうと、ちょっとでも違う音源があればすべて収録というマニアックな方針のもと、モータウンの系列レーベルから出たシングルのAB面を網羅する大偉業。その11箱目が出た。今回は5枚組。1971年のシングル音源集だ。“Vol. 11A”って書いてあるし、実際、今回収録されているのは1971年6月のリリースまでだし。てことで、近いうちに11Bとして1971年後半の5枚組かなんかが来るんでしょう。

この後、1972年からモータウンは正式に活動拠点をロサンゼルスに移す。というわけで、この第11集、デトロイトで誕生したモータウンが本当にモータウンらしかった最後の瞬間を記録した音源集でもある。というか、マーヴィン・ゲイ、スティーヴィー・ワンダー、ジャクソン・ファイヴ、ダイアナ・ロス、テンプテーションズといったモータウンの看板アーティストたちに加えて、ここにはボビー・ダーリン、レア・アース、クルセイダーズ、キキ・ディーなどのシングル音源も並んでいて。すでに“黄金のモータウン・サウンド”みたいなひとことでざっくりレーベルのサウンド・カラーをひとくくりにできる時期は過ぎてしまっていることがよくわかる。

ちなみに、毎回1枚ずつ付いてくる復刻アナログ・シングル盤、今回はマーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイング・オン」。もちろんシングル・ヴァージョンだけど。考えてみれば、この曲を“ガヤ”なしのシングルで聞いていたファンは当時から少なかったはず。この曲を収録したマーヴィンの同名アルバムは、モータウン所属アーティストが個人名義でリリースした初のコンセプト・アルバムでもあって。“ホワッツ・ゴーイング・オン”といえば、シングルではなくてあのアルバムのことを指すことが多かった気がする。つまり、1971年というのは、鉄壁のシングル・オリエンテッド・レーベルとしてスタートしたモータウンですら、いよいよシングルではなくアルバム時代に突入した時期だったわけで。“コンプリート・シングルズ”ってシリーズ・コンセプトとそぐわなくなりつつあった時代に突入した、と。その辺、微妙ではありますが。

先日、ピーター・バラカンさんと対談の仕事があって、来年いよいよ創設50周年を迎えるモータウンのこと、あれこれ話したんだけど。ピーターさんもこのシリーズ、ずっと買っていたけれど、さすがに60年代いっぱいで買うのやめたそうです(笑)。それはそれで悪くない選択かな、と。でも、ぼくはもう仕方ないので、出る限り買い続けますよ。うう…。この第11集、ディスク枚数にして通算56~60枚目。現在60枚組ってことね(笑)。最終的に何枚組までいくのやら。

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