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Disc Review

Swamp Music: The Complete Monument Recordings / Tony Joe White (Rhino Handmade)

スワンプ・ミュージック〜ザ・コンプリート・モニュメント・レコーディングズ/トニー・ジョー・ホワイト

第2回歌舞伎町ボブ・フェス、楽しかったです。mixiコミュのほうにも書いたことだけれど。この youtube 時代、珍映像自体はそれぞれ家にいてもパソコン上でわりと気楽に楽しめるわけだけど。大勢集まって、鑑賞ポイントを共有しつつ、でかい画面でみんなで爆音で楽しむというのは、またそれなりに違った味わいがあって。やっぱ、いいすね。

で、まあ、ディランといえば、ハーモニカで。生ギター弾きながら、ハーモニカ・ホルダーに装着したブルースハープを吹く姿が、その昔、やけにかっこよく映ったわけですが。ハーモニカ・ホルダー使いの中でぼくがいちばん好きなのは、実はディランではなくて。この人、スワンプ・ミュージックの王者、トニー・ジョー・ホワイトです。もちろんトニー・ジョーも生ギター弾いたりすることも多いのだけれど、かつて、彼がデビューしたばかりのころによく目にした写真は、座って、ギブソンのセミ・アコ弾きながら、ハーモニカ・ホルダーを首にかけて、ブルース・ハープをぶわ~っと吹いているお姿で。

おー、こういうのもありなんだ、という痛快な気分がまだガキだったぼくの胸を躍らせたものだ。ディランのおかげでできあがってしまった、ハーモニカ・ホルダーといえばフォークの道具、みたいな先入観を軽々と吹っ飛ばしてくれた。

そんなトニー・ジョーの初期音源を集大成した箱が出た。副題の通り、モニュメント・レコード在籍時の全音源集。69年と70年に出た3枚のオリジナル・アルバムを中心に、同時期の未発表音源をたんまり詰め込んだ内容だ。70年のワイト島ライヴも7曲入っている。未発表音源は全36曲。うち、別ヴァージョン4曲。69年、パリでの弾き語り音源が10曲。残りは自作、カヴァー交えたほんとの未発表曲。いやー、くらくらする。これらの音源をオリジナル・アルバム3枚の紙ジャケと、懐かしきスコッチ・テープの箱を模した紙ジャケにぶちこんだ怒濤のCD4枚組だ。

まだスワンプ・ロック色の薄いポップなデビュー・シングルや、オーダム/ペン作、ビリー・スワン・プロデュースのセカンド・シングル、少しずつ独自のスワンプ・ロック・サウンドを強調し始めたサード・シングルなどもちゃんとシングル・ヴァージョンで収録。うれしい。

でも、特にすごいのがパリ録音の未発表音源か。セミ・アコ、ハーモニカ、ヴォーカルだけの弾き語り音源なのだけれど、むちゃくちゃかっこいい。太く、渋い歌声は相変わらずごきげんなうえ、ギターでがっちりリズム隊の役割もこなし、ハーモニカでホーン・セクションの役割を代用し…。これで、まじ十分。最強にファンキー。ブルージー。トニー・ジョーの音楽の核のようなものがくっきり見えてくる。

この人が体現するスワンプ・ロックの重要なルーツはカントリー・ミュージックなわけだが。といっても、マウンテン・ミュージックと形容されることもあるタイプのピュア・カントリー音楽じゃない。マウンテン・ミュージックがイギリスのトラッド/フォーク・ソングの影響を強く継承しているのに対し、南部の湿地帯を中心に広まったカントリー音楽は、以前ソロモン・バークの盤を紹介したときにも書いた通り、白人も黒人も環境をともにしながら入り乱れて暮らしているという土地柄を反映してか、よりブルース色、R&B色が濃い。そんな音楽性にオブラートをかけることなく表現したトニー・ジョーの音楽を堪能するには欠かせない充実箱です。本人インタビューを中心にした充実のブックレットも貴重。

インターネット通販オンリーのライノ・ハンドメイドからの5000セット限定リリースなので買うのが面倒って人もいるかもしれませんが、いい音楽を聞くには多少の面倒を抱え込んだほうがいいっすよ。クリックひとつで安価に音楽ファイルそのものがハードディスク上とか携帯とかにやってくる利便性は素晴らしいけど、そのぶん最近は音楽の存在感がどんどん軽くなってるみたいだし。少しでも手間かけてパッケージを手に入れた音楽にはそれだけ愛着が湧くかも、です。つーか、これもクリックひとつみたいなもんだけど(笑)。いつものようにシリアル・ナンバー入りです。

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