エッセンシャル/ブルース・スプリングスティーン
最近ノリノリの米ソニー/コロムビアの“エッセンシャル・シリーズ”。われらがボス、ブルース・スプリングスティーンのベストが出た。以前リリースされた1枚ものグレイテスト・ヒッツ盤は新曲も含む80年代以降の音源中心の選曲だったが今回は2枚組へとヴォリューム・アップ。70年代の音源もたんまり詰め込んだ仕上がりだ。さらに初回限定盤にはボーナス・ディスクも付いていて。ここに未発表曲や未アルバム化シングルB面音源、ライヴ音源、コンピ/サントラのみの収録音源など、興味深い12曲が収められている。
個人的にはデイヴ・エドモンズへの提供曲「フロム・スモール・シングズ」の自演版がいちばんうれしかった。他にも『ボーン・イン・ザ・USA』セッションからの必殺の未発表曲とか、伝説の“ザ・リヴァー・ツアー”からの音源とか…。震えがくる。
スプ親分の場合、なにやらウルサ方を気取る日本人ロック・ファンには評判が悪い。この人を聞いて“国威高揚っぽい”とか“高圧的だ”とか言う音楽評論家さんまでいるくらいで。音楽から何を聞き取っているのやら。ずいぶんと浅いところでアメリカン・ロックと付き合ってるんだろうな、とあきれるばかりだ。確かにスプさん、音作り自体が時に暑苦しいこともある。“個”に返るぞという自己確認の歌までが結果として奇妙な“連帯”の意識を呼び覚ましてしまいそうなところもある。それが、この人のすごさでもあり、困った部分でもあり…。それにしたって、少なくとも70年代半ばから80年代、ブルース・スプリングスティーンは最強のアメリカン・ロックンロール・アーティストだった。間違いない。個人的な好みを全開にすれば、今なお…ですが。シナトラ→ディオン→スプリングスティーンの系譜。イタロな東海岸音楽に弱いワタシです。
既発音源で構成された2枚組ベストのほうもリマスタリングによって音質アップ。ちょっと選曲的に物足りない感、なきにしもあらずだけれど。一般的向けの2枚組ベストならばこんなものかな。ぼく個人が感じた物足りなさをふまえて、有線のほうの番組で2時間、ブルース・スプリングスティーンの健太版ベストを選曲しましたので、聞ける環境にある方はぜひ。