
アイム・ア・ストレンジャー・ヒア・マイセルフ:ウェインライト・ダズ・ヴァイル/ルーファス・ウェインライト&ザ・パシフィック・ジャズ・オーケストラ
ドイツ、フランス、そしてアメリカへ。20世紀前半の国家的な混乱、恐怖、亡命、戦争、痛み…。そんな中で紡がれてきたクルト・ヴァイルの名曲たちを今の時代に改めて解き放つことの意味。なんかじわじわくる。
幼いころにロッテ・レーニャの歌で、20代のころにはテレサ・ストラータスの歌声で、浴びるようにヴァイルものを聞いたというルーファス・ウェインライトによる素晴らしいヴァイル作品集だ。
2023年5月、ニューヨークのカフェ・カーライルでの公演を皮切りに続けられてきたヴァイルへのトリビュート・コンサート。その流れで催された2024年3月、ロサンゼルスのユナイテッド・シアターでのパフォーマンスを記録したライヴ盤だ。40人編成のパシフィック・ジャズ・オーケストラ(指揮・編曲/クリス・ウォルデン)がバックアップしている。
ヴァイルは自分にとっての長年の師であり、かつ鏡でもある、と語るルーファスだけに、素晴らしい仕上がり。ルーファスが今の時代に問う、“ストレンジャー”であることの意味、みたいな?
古きフレンチ・キャバレー、ブロードウェイ、クラシック、ジャズなどのムードを行き来しつつ、英語、フランス語、ドイツ語を操りながら歌い綴るルーファスの表現力を改めて思い知る1枚でもあります。
ルーファスがインタビューで答えていたのだけれど、ヴァイルの曲はちょっと疲れているときのほうが沁みる、と。なるほど。世界中、疲れてるからな。沁みます。まじ。

