Disc Review

Christopher Cross (Expanded Edition) / Christopher Cross (Omnivore Recordings)

南から来た男(45周年エクスパンデッド・エディション)/クリストファー・クロス

ほんと売れてたなぁ。大学出て、某出版社で編集者やってたころ、昼休みとかにどの喫茶店入っても、BGM、ずっとこの人だった気がする。ある時期のノラ・ジョーンズみたいな感じか。

ディスコ・ブームとか、パンク・ムーヴメントとか、ニュー・ウェイヴ旋風とか、そういう喧噪の狭間にぽっかり空いたエアポケットに、アダルト・コンテンポラリーな安らぎを届けてくれた…的な?

いかつい風貌と裏腹な優しいハイトーン・ヴォーカルと、憂いを含んだソフトなメロディ・ラインが売り物で。本ファースト・アルバム『南から来た男(Christopher Cross)』はマイケル・オマーティアンのプロデュースの下、マイケル・マクドナルド、ニコレッタ・ラーソン、ヴァレリー・カーター、ドン・ヘンリー、J.D.サウザー、ラリー・カールトン、ジェイ・グレイドンら豪華な顔ぶれがバックアップ。

そのかいあってか、アルバムは大ヒット。通算116週にわたって全米アルバムズ・チャートにランクされ続け、プラチナ・アルバムを獲得した。シングル・ヒットも4曲誕生。第1弾「風立ちぬ(Ride Like the Wind)」は全米2位、第2弾「セイリング」は1位。さらに「もう二度と(Never Be the Same)」「セイ・ユール・ビー・マイン」の2曲もトップ20ヒットを記録した。

さらに翌81年の第23回グラミー賞では、最優秀レコード、最優秀アルバム、最優秀楽曲、最優秀新人という主要4部門を含む5部門を独占受賞。主要4部門全制覇の快挙は、2020年、ビリー・アイリッシュに並ばれるまではこの人だけが成し遂げた偉業だった。

と、そんな大ヒット作の45周年エクスパンデッド・エディション。かつて出ていた20周年記念エディションを凌駕する豪華な拡張版です。数カ月前に配信がスタートしていたけれど、そのフィジカル、ようやく出ました。オリジナル・アルバム収録の9曲に関しては2019年に出たバーニー・グランドマンによるハイレゾ・リマスター音源が使用されているみたい。それに加えて、ボーナスが11曲。うち、80年に日本独自に出たシングル、「世界歌謡祭」エントリー曲「マリー・アン」と、もろもろのデモ3曲、計4曲が既発トラックながら、残る7曲は今回初出のデモ音源だ。

いずれもマイケル・オマーティアンが手を加える以前のラフなスケッチで、今回ていねいにレストアされたものばかり。初聞きの未発表曲も含まれていて、なんだかそこそこお得感もある。オマーティアンへのインタビューを含む新規ライナーも興味深い。

てことで、夏に向けて真っ向からのヨット・ロック、楽しんじゃいますかねー。

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