Disc Review

September Days / Mike Delevante (self released/Truly Handmade Records)

セプテンバー・デイズ/マイク・デレヴァンテ

Eストリート・バンドのギャリー・タレントやハートブレイカーズのベンモント・テンチ、さらにはリヴォン・ヘルムとかが関わっていたことでもおなじみ、ボブとマイクの兄弟バンド、ザ・デレヴァンテス。

途中、いったんバンド活動を休止していたけれど、ギャリー・タレントに後押しされながら2019年に活動再開。並行してお兄さんのボブのほうはこれまでに3枚くらいソロ・アルバムも出していて。マイクもそれをバックアップしたりしていて。

で、ついに弟さん、マイクのほうのソロ・アルバムも出ました。全曲ご本人の自作曲で。アルバム・タイトルの“セプテンバー”というのは、アメリカではひとつの始まりの季節というか。何かの変わり目。そんな日々をほんのりテーマに据えつつ、ジャングリーなギター・リフに導かれたリード・トラック「ザ・レイン・ネヴァー・ケイム」でアルバムは幕を開けて。

“雲が広がった/雷がとどろいた/風がぼくを吹き飛ばした/でも雨は降らなかった…”という歌詞がサビで繰り返されるのだけれど。終末を予言する陰謀論者がかき乱す時代に対して、いい感じにポジティヴなヴィジョンを提示してくれているようで。なんだかほっとする。

アルバムのラスト3曲も印象的で。「サンセット」「トゥー・ファー・ゴーン」「ゴーイング・ホーム」と続くのだけれど。1日の終わり、遠いどこか、かつていた場所への回帰…。過去といかに折り合いをつけながら、今を、そして明日を生きていくのか。そんな思いがアルバムを通してさりげなく綴られていく。「ゴーイング・ホーム」では“君に心変わりしてもらおうとした/でも今はそのタイミングじゃないと気づいた/列に並ぶなんて我慢できない/ドーヴァー行きの列車の最終駅/夏の雨が懐かしい/いつまでも同じならもうやめるよ/故郷に帰る”とか歌われています。

現在はナッシュヴィルを拠点に活動しているデレヴァンテ兄弟ながら。出身はニュージャージー。そういう意味で、まあ、プラシーボかもしれないけど、なんとなく同郷のブルース・スプリングスティーンとかにも通じる東海岸ならではのロマンチックでセンチメンタルな感触があるような。いや、ないような…。わかんないけど(笑)。

基本的には兄のボブ同様、トム・ペティやマーシャル・クレンショウあたりを思わせるジャングリーなフォーク・ロック風味とレトロ・ポップ感覚とが交錯する作風。ジョシュ・ラウズ、k.d.ラング、ベン・フォールズ・ファイヴ、ドリュー・ホルコムなども手がけるジョー・ピサピアがプロデュース。およびギター、キーボード、ペダル・スティールなども担当。

その他、ギャリー・タレントとウィル・ホナカーがベースやギターなど。ダン・ノブラーがアコギ。ブライアン・オーウィングズとジェイミー・ディックがドラム、パーカッション。で、デレヴァンテがギター弾きながら歌っている、と。ボブ兄もハーモニカで参加してます。

新しいとか古いとか、そういう近視眼的な価値基準で言えば、たぶんまったく新しいところなどない1枚なのだろうけど。ほんの時折、すごく胸キュン系のコード進行がよぎったりして。急にあったかくなった中、近所を散歩しながら聞いていたらなんだか気分がふわふわ楽しくなってきました。

フィジカルは今のところバンドキャンプ本人のWEBで売ってるCDしか見つけられていません。LPほしい…。

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