Disc Review

Foxes in the Snow / Jason Isbell (Southeastern Records/Thirty Tigers)

フォクシーズ・イン・ザ・スノー/ジェイソン・イズベル

ジェイソン・イズベルの新作は、なんと自ら奏でるアコースティック・ギター1本をバックに展開する弾き語りアルバムだ。

この人、本格的にパンデミックが巻き起こる直前、2020年の1月にすべり込みで来日してくれたときは、自ら奏でる生ギターと、当時の妻、アマンダ・シャイアーズによるフィドルとコーラスだけを従えたアコースティック・ライヴだった。そのシンプルな編成が、この人ならではの楽曲の深さとか渋さとかを際立たせてくれていて。ものすごく沁みたものです。

そういう意味では、アコギ1本を抱え、ニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオでほんの5日間でレコーディングされたという本作、待ってました!的な? 

ザ・400ユニッツ抜きでのスタジオ・アルバムとしても2015年の『サムシング・モア・ザン・フリー』以来。10年ぶりだ。400ユニットのメンバーとしても重要な役割を果たしていたアマンダさんと去年、正式に離婚したことも影響しているのかな。というわけで、400ユニットとのアメリカーナ〜ルーツ・ロック路線ではなく、ぐっとフォーク寄りの味わいを強調した仕上がりだ。

「グッド・ホワイル・イット・ラステッド」や「アイリーン」のように、パーソナルな心の揺らめきを赤裸々に綴った楽曲も目立つ。「グラヴェルウィード」って曲では、“ごめん、今はラヴ・ソングがみんな違う意味に聞こえてしまう”とか切々と綴っていたり。「ドント・ビー・タフ」では“タフにならなきゃならないときまで強がるな/ハートブレイクを受け止めるんだ…”とか、マール・ハガードの「イフ・ウィー・メイク・イット・スルー・ディセンバー」を思わせる軽やかなメロディに乗せて歌っていたり。《ロバーツ》という酒場の金曜日を歌った「ライド・トゥ・ロバーツ」では、“俺たちは誰でも道に迷う/正しい道には深い溝が潜む/神は言う、「ちょっとこのビールを持って待ってろ」と/そして人を創った。人を見て笑うために…”とかやさぐれていたり。

このアルバムでジェイソンさんは、人生が思い描いた通りに進まなかったとき、いかにして前を向けばいいのか、故郷がぼやけて見えてきたときいかにして焦点を合わせ直せばいいのか、自問し続ける。

2013年の『サウスイースタン』や2023年の『ウェザーヴェインズ』と肩を並べる名盤だと思います。

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