Disc Review

Eli and the Thirteenth Confession (SACD Multi Hybrid Edition) / Laura Nyro (Sony Music Japan)

イーライと13番目の懺悔(SACDマルチ・ハイブリッド・エディション)/ローラ・ニーロ

ローラ・ニーロについては、いつもいつも同じことを繰り返し書いているのだけれど。

1950年代、ニューヨークの街角で生まれたドゥーワップ。1960年代、サンフランシスコのコミューンに花咲いたサイケデリック・ロック。1970年代、ロンドンやニューヨークで爆発したパンク。1980年代、やはりニューヨークのはきだめのような街路で発生したヒップホップ。様々なストリート・ミュージックが時代時代の都会の路上を彩ってきた。

そのどれとも共通し、かつ相反する魅力をはらんだ豊潤なストリート・ミュージックを奏で続けた歌姫、それがローラ・ニーロだった。

彼女のことについては以前、本ブログでもいくつかのエントリーで取り上げていて。そこでだいたい書きたいことはとりあえず書いちゃっている感じなのだけれど。

彼女の残したアルバムはどれも素晴らしい。が、今回、7インチ紙ジャケ仕様で再発された1968年のセカンド・アルバム『イーライと13番目の懺悔(Eli and the Thirteenth Confession)』がぼくは大好き。ここで聞かれる彼女の歌声は、まじ、奇跡だ。ゴスペル、ジャズ、R&Bといった黒人音楽を、触れたらこわれてしまいそうに繊細な感性で再構築。チャーリー・カレロの的確なプロデュース/アレンジの下、ニューヨークという街に渦巻く喧騒や諦観や熱気や退廃を赤裸々に綴ってみせていて。

これまたいつも繰り返し書くことなのだけれど。確かに彼女がこの傑作を録音した1960年代とは街の風景も様変わり。けれども、その奥底に見え隠れする“都会の孤独な息づかい”ってやつは、いつの時代も変わらないから。だからこそローラの歌声は、今も街に暮らすぼくたちの心をとらえて離さないのかな、と。今回もそんなことを改めて…。

で、今回は通常のステレオ・ヴァージョンに加えて、貴重な4chサラウンド・ミックスを収録したSACDマルチ・ハイブリッド盤。音のほうは2016年にAudio Fidelityから出たハイブリッドSACDと同じかな? ただ、さすがは日本。仕様が凝ってます。USオリジナルLPのジャケットを可能な限り再現。レーベル面もUSオリジナルLPに準ずる形。歌詞カードも例の、ジャケットにひっかけてあったUS仕様の変型もの。かと思うと、日本盤初リリース時の帯のレプリカがジャケットにかかっていて。1970年にリリースされた「ストーンド・ソウル・ピクニック」の日本盤シングルの復刻ジャケット(TBS平川ディレクターの解説付き)も封入。日米混交の全部入りって感じです。

ライナーはローラ・ニーロと言えばこの人、という感じの長門芳郎さんがお書きになっていて。2002年の米盤CDのブックレットも付いている。加えて、初発売当時の日本盤に添えられていた中村とうようさんのオリジナル・ライナーも再掲!

もう何枚目の『イーライ…』だかわからないけど。でも、やっぱりゲットしちゃうのでありました。ああ…。

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