サザン・コンフォート/ミシェル・マローン
昨日紹介したカーティス・エラー同様、キックスターターのクラウドファンディングで制作費を調達した新作アルバム。ミシェル・マローンの新作です。
REMのビル・ベリーらのサポートを受けつつインディ・デビューを飾ったのが1988年。自身のバンド、ドラッグ・ザ・リヴァーとしてのファーストをメジャーから出したのが1990年だから。もうプロとしてのキャリア35年以上。ミシェルさんもベテランになりました。
米アトランタ出身ということで。南部というか、ジョージア州とかにずっとこだわった感じで活動してきていて。ごきげんなサザン・ロック、ブルース・ロック、カントリー・ソウルをいつも届け続けてくれている頼もしいおねーさまなわけですが。そういうベテランでもクラウドファンディングに頼ったりしなければなかなか新作を制作することもできない昨今である、と。そういうことか。大変だ。
2022年にリリースした『1977』あたりから、ちょっとおとなしめというか、アンプラグド寄りのテイストを強調している感じだったけれど。今回リリースされた新作では、もちろんそうした味わいも引き続き提示しつつ、持ち前のサザン・ロック味、カントリー・ロック味などもぶちかましてくれていて。うれしい。
ブラックベリー・スモークのポール・ジャクソンやチャーリー・スターをはじめ、バディ・ミラー、ランドール・ブラムレット、ウィル・キンブロー、ジョージア・サテライツのリック・リチャーズらがバックアップ。ミシェルさんのバンドのギタリスト、ダグ・キーズも含めて、みんながこぞってごきげんなソロやグルーヴを提供している。もちろんミシェルさん自身もここぞでスライドきめたりしていて、かっこいい。
歌詞にはけっこう、なんだ、こう、えーと、情念みたいなものがぶわーっとぶちまけられているようで。ウィル・キンブローのギター・ソロをフィーチャーした「バーブド・ワイア・キッシズ」では“あなたの有刺鉄線のようなキスは私の心をぐるぐる巻きにする錆びた鎖…”とか繰り返しているし。ラストの「ワイン・アンド・リグレット」って曲では“あなたを絶対に離さない/いつもそばにいて/私のそばに/幽霊にできるくらいそばに…”とか、じわじわ迫ってくるし。自分が生まれる前には両親は幸せで、でも、自分が生まれた後で離婚してしまって…みたいな複雑な思いを吐露している曲もあったし。
曲によってはちょっとたじろぐけど。ただ、そういう曲も含めて音は楽しい。新しいものなど何ひとつないかもしれないけど、なかなかにごきげん。
1990年代に自ら立ち上げたSBSレコードからのリリースということもあって、まだあまりフィジカル売ってるところを見かけない。ミシェルさんのオフィシャルWEBショップで注文するのがいちばん確実かも。応援買いだな。