アイム・ジミー・リード(2024リマスター)/ジミー・リード
ジミー・リードが1958年にリリースしたファースト・フル・アルバム『アイム・ジミー・リード』。大名盤だけにこれまで何度も再発が繰り返されてきたのだけれど。このほどクラフト・レコード傘下のブルーズヴィル・レコードが改めて最新リマスタリングを施しつつ(オリジナル・アナログ・マスターからデジタルを通さずにAAAマスタリングしているとのこと)、11月にCD、および重量盤アナログLPで再発することになって。
それに先駆けてハイレゾ・ストリーミング/ダウンロードも始まったので、取り急ぎ大喜びでご紹介です。ブルーズヴィルは“アコースティック・サウンズ・リイシュー・シリーズ”と銘打ってライトニン・ホプキンスとかジョン・リー・フッカーとかアルバート・キングとか、いい音で甦らせ続けてくれていて。その最新作ってことになる。
ジミー・リード、まじかっこいいから。大好き。ほんと、うれしい。何年か前、ロニー・ウッドの『ミスター・ラック:ア・トリビュート・トゥ・ジミー・リード』ってライヴ盤を紹介したときに書いた文章、まんま再掲しますね。
ぼくがジミー・リードというブルースマンの名前を初めて知ったのは、1970年のお正月に日本でもオンエアされたエルヴィス・プレスリーのテレビ特別番組『エルヴィス』(通称“‘68カムバック・スペシャル”)を通して。あの番組の、いわゆる“シット・ダウン・セッション”、アンプラグドの原型ともいうべきライヴ・シーンでエルヴィスはこれでもかという勢いで「ベイビー・ホワット・ユー・ウォント・ミー・トゥ・ドゥ」という曲を繰り返し繰り返し歌っていたのだけれど。それが1960年にヒットしたジミー・リード作品のカヴァーだった。
エルヴィスは残念ながらこの曲のスタジオ・レコーディングを残さずじまいだったものの、そのテレビ・スペシャルのサウンドトラック・アルバムにはもちろん収録されていて。ぼくはそれで、本当に何度も何度も聞いた。ファンキーかつキャッチーなシャッフル・ブルース。エルヴィスが渋いフルアコ・ギターの低音弦でごきげんなリフを繰り出しながら歌い出すと、バックを固める旧友ミュージシャンたちが即座に食いついていく、そんな様子にもしびれたものだ。
いろいろ調べてみたら、このジミー・リードという人、ローリング・ストーンズを筆頭とする英国ビート・グループたちにも多大な影響を与えた米ミシシッピ出身のブルースマンであることがわかって。さらにエルヴィスが当時自身のシングルとしてリリースし、このテレビ・スペシャルの中でも歌っていた「ビッグ・ボス・マン」という曲もまたジミー・リード盤がオリジナルだったことを知った。
で、なんとかがんばってジミー・リードのアルバムを手に入れた。当時なかなか買うのも大変だった輸入盤で探してゲットした。この人、曲によってはベースレスの変則トリオ編成で演奏しているもんで。なんだか最初は物足りなく感じたりもしたものだが。グルーヴィーなシャッフル・ビートを繰り出すギターと、高音部で鋭いベンドをかましながら聞く者の胸へとストレートに突き刺さる泣きのブルース・ハープ、そして飄々としたヴォーカルが織りなす独自の世界には、ゆるさとソリッドさ、熱さと切なさなどが絶妙に交錯していて。なんとも言えない魔力が潜んでいた。もちろんぼくは、すっかりトリコになった。クセになった。
エルヴィスがカヴァーしていた「ベイビー・ホワット・ユー・ウォント・ミー・トゥ・ドゥ」や、エルヴィスだけでなくグレイトフル・デッドやボビー・ジェントリーもかう゛ぁーしていた「ビッグ・ボス・マン」、そして代表曲「オネスト・アイ・ドゥ」、「エイント・ザット・ラヴィン・ユー・ベイビー」、「ブライト・ライツ・ビッグ・シティ」など、大好きだったなぁ。
と、そんなジミー・リードが1953年から58年まで、ヴィー・ジェイ・レコードでリリースしてきたシングルからB面曲なども含めて12曲をピックアップ。まとめたのが本作『アイム・ジミー・リード』だ。そういう意味では、初フル・アルバムにしていきなりベスト盤みたいなものだったわけだけれど。
しかし選曲的にも初期代表曲の雨アラレで。オリジナル・アルバムとしてもばっちり楽しめる内容だ。ちなみに収録曲をシングル・リリース順に並べ替えつつ、演奏メンバーも記しておくと——
■Roll and Rhumba (1953 B-side)
Jimmy Reed (vocal, harmonica, guitar), John Brim (guitar), Albert King (drums)
■You Don't Have to Go (1955 US R&B #5)
■Boogie in the Dark (1955 B-side)
Jimmy Reed (vocal, harmonica, guitar), Eddie Taylor (guitar), Albert King (drums)
■Ain't That Lovin' You Baby (1956 US R&B #3)
■Can't Stand to See You Go (1956 US R&B #10)
Jimmy Reed (vocal, harmonica, guitar), Eddie Taylor (guitar), Vernel Fournier (drums)
■My First Plea (1956 B-side)
■You've Got Me Dizzy (1956 US R&B #3)
■Little Rain (1957 US R&B #7)
■Honest I Do (1957 US R&B #4, Pop #32)
Jimmy Reed (vocal, harmonica, guitar), Eddie Taylor (guitar), Earl Phillips (drums)
■You're Something Else (1958)
■You Got Me Crying (1958)
■Go On to School (1958 B-side)
Jimmy Reed (vocal, harmonica, guitar), Remo Biondi (guitar), Earl Phillips (drums)
という感じ。アール・フィリップス、ヴァーネル・フォーニアーらR&B系、ジャズ系のドラマーに交じって、初期セッションでは若き日のアルバート・キングがギターでなくドラムを担当していて、それ知ったとき、びっくりしたものです。げっ、この人、全メンバーの中でいちばんギターうまいかもしれないのに…と(笑)。
このクレジット見てもわかる通り、ジミー・リード・バンドは基本的にベースレス。ギター+ギター+ドラムにジミー・リード自身による高音ブルース・ハープが鋭く切れ込んでくるという編成だ。おかげで、なんとも微妙に重心が軽い音像なのだけれど、それが面白い一体感を生み出していて、3人で粘っこい弾き語りを繰り広げているみたいな、不思議な感触を伝えてくれて。ものすごくかっこいい。
まずはハイレゾでゲット。11月になったらLPも買うぞっ! おーっ!