Disc Review

Long Way Home / Ray LaMontagne (Liula Records/Thirty Tigers)

ロング・ウェイ・ホーム/レイ・ラモンターニュ

この人のことは、今からちょうど20年前の2004年、ファースト・アルバム『トラブル』が出たとき、いったいどんな人だか、さっぱり何の資料もない状態でアルバムのライナーノーツを書いたのが最初の出会いだったのだけれど。

さっぱり何もわからなかったとはいえ、その歌声には一発でやられた。以来、アルバムを重ねるたびに聞き続けてきて。まあ、いろいろ時期によって表層的なサウンド・スタイルが変わったりもする人ですが。底辺に流れるカントリー・ソウル魂だけは不変で。いつもじわじわ胸を震わせてくれる得がたい存在です。

ファースト・アルバムを出した段階で31歳という遅咲きだったから、今年で51歳。もともと年齢以上に渋い世界観を届けてくれてはいたのだけれど。本当に渋い年代に入って。その魅力がさらに深まってきた感じ。ほぼ2年に1作ペースなので、20年目にしてこれが9作目。今回の新作でも、曲によって往年のヴァン・モリソン、ニール・ヤング、ティム・バックリー、タウンズ・ヴァン・ザントなどを想起させつつ、でも最終的にはそのどれとも違う、この人ならではの枯れた歌心を楽しませてくれる。

ラモンターニュ自身と、フローティング・アクションのセス・カウフマンが共同プロデュース。2020年の前作『モノヴィジョン』は、ほぼすべてラモンターニュひとりで作り上げた、ぐっと内省に入り込んだ仕上がりだったけれど、今回はゲスト入りで少し外向きな仕上がり。

ラモンターニュは今年の春に出たシークレット・シスターズのアルバム『マインド、マン、メディシン』で1曲、客演していたけれど、そのお返しという感じでシークレット・シスターズのローラ・ロジャースとリディア・スラグルがなんともヘヴンリーなハーモニーを提供していたり、マイ・モーニング・ジャケットのカール・ブローメルがペダル・スティールを聞かせていたり…。

そのブローメルのペダル・スティールが効果的に響く「アイ・ウドゥント・チェンジ・ア・シング」って曲とか、そのタイトルがラモンターニュの信念そのものを表しているようで。しびれる。“何度もうちのめされた/地べたに這いつくばった/でも時を戻すことできたとしても/友よ、俺はこう伝える/俺はもう一度同じことを繰り返すってね”みたいなこと歌ってて。

ファースト以来、いちばんかっこいいかも。月末にはBSMFから国内仕様盤も出ます。

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Liula Records
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