Disc Review

First Rays of the New Rising Sun (2024 Japanese 2LP Edition) / Jimi Hendrix (Sony)

ファースト・レイズ・オブ・ザ・ニュー・ライジング・サン(2枚組LPエディション)/ジミ・ヘンドリックス

今日は日本独自のアナログLP再発を。

ジミ・ヘンドリックスの『ファースト・レイズ・オブ・ザ・ニュー・ライジング・サン』。ご存じ、最終トラックダウン直前にジミが急死してしまったため、当初彼が望んでいた形でリリースされずじまいだった幻の2枚組です。

ご存じの通り、ジミ・ヘンドリックスは晩年、といっても彼は1970年9月、若くして亡くなってしまったから、まだ20代半ば過ぎの時期ではありますが、ニューヨークに自身のスタジオ“エレクトリック・レディ”を設立。過密スケジュールの合間を縫っては膨大なレコーディングを行なっていた。おかげで他界後、次々とそれらの音源が発掘リリースされて、生前より多くのアルバムが世に出るという妙な状況になっているわけですが。

もともとジミ・ヘン本人もそんなに早く死んじゃうとは思っていなかったこともあり、彼はそうした音源を死後どうするか遺言を残していなかったうえ、マネージャーのマイケル・ジェフリーも事故死してしまったこともあり、大混乱。正規版、海賊版入り乱れての混沌にぼくたちファンは右往左往してきた。

そうした混乱がようやく収まったのが1997年。裁判の末、ジミの遺族にそうした未発表音源の権利があると正式に確定したことで、エクスペリエンス・ヘンドリックス財団が設立されて。以降はかなり落ち着いた形で発掘リリースが続いている、と。

ただ、スタジオ録音盤に限って言うと、たとえば『サウス・サターン・デルタ』とか、『ヴァリーズ・オブ・ネプチューン』とか、『ピープル、ヘル&エンジェルス』とか、いろいろレアな未発表音源集が出たけれど、今回日本でアナログLPでの再発がなされた本作『ファースト・レイズ・オヴ・ザ・ニュー・ライジング・サン』のみが生前のジミ・ヘン本人の遺志をそれなりに反映した作品というか。

確かにこの辺りの音源は、死後間もない1971年から72年にかけて、『クライ・オヴ・ラヴ』『レインボウ・ブリッジ』『戦場の勇士たち(War Heroes)』といったアルバム群に振り分けられて世に出たり、1995年、アラン・ダグラスの監修の下、本作に近い内容の『ヴードゥー・スープ』って盤にまとめられたりはしてきたけれど。

やはり1997年に生前のジミとタッグを組んでいたエンジニア/プロデューサーのエディ・クレイマーの手によって、曲順なども含めジミ本人の意向を汲んだフォーマットに再構成されたのが『ファースト・レイズ・オヴ・ザ・ニュー・ライジング・サン』だった、と。まあ、このあたりの話はもう耳タコだったかも。すんません。

とにかくこのアルバム、ジミ・ヘンが若くして悲劇の死を遂げなければどんなことになっていたのか、推測するだけで震えがくるような強烈ファンク・ロックの雨アラレで。以来、レコード会社が変わったり、紙ジャケになったり、DVD付きになったり、何度もリリースを繰り返す中、今やジミのオリジナル・アルバムのひとつとして認識されるに至った感じ。ぼくも、ジミの死後作の中ではこれをいちばん聞いているかも。

もちろん1997年の段階からLPも出てはいた。けど、今回は2010年に当時の最新リマスター音源を使ってヨーロッパでリリースされた重量盤の初国内流通らしい。DVD付きの拡張仕様で出た2010年エディションから映像を除いたLP2枚組。全17曲。プラシーボかもしれないけど、音質がどうのではなく、この時代の音はアナログで聞いたほうがしっくりくるような…。

CDは1枚ものだったので、全曲だだーっとつながっていたわけですが。そのときに失われたB面1曲目というおいしい位置に「ドリー・ダガー」が、C面1曲目に「ステッピング・ストーン」が、そしてD面1曲目に「アース・ブルース」が、それぞれ入っているというのも、盤をかけていてなんだか盛り上がります。特にB面アタマの「ドリー・ダガー」から「イージー・ライダー」って流れが最高かも。

開封動画、載ってました(笑)。

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