オンリー・ゴッド・ワズ・アバヴ・アス/ヴァンパイア・ウィークエンド
久々。5年ぶり。途中、来日とかもあったのでごぶさた感は薄いかもですが、ヴァンパイア・ウィークエンドの新作アルバム、出ました。
エズラ・クーニグをはじめメンバーは現在、みんなロサンゼルスに住んでいるらしいけれど、ヴァンパイア・ウィークエンドといえばやっぱりニューヨーク。もともとコロムビア大学でメンバーどうし出会って結成されたバンドだし。
そんな彼らがニューヨークをテーマに据えて制作したのが今回の新作『オンリー・ゴッド・ワズ・アバヴ・アス』なのだとか。離れた地点から眺める故郷、みたいな? 単に距離的な隔たりだけではなく、時間軸的なエキゾチシズムというか、往年の空気感みたいなものへの眼差しもはらんでいるようで。エズラたちの視線の先には20世紀の米東部、ニューヨーク周辺があるらしい。
たとえばこのアルバム・ジャケット、ニューヨーク出身の写真家、スティーヴン・シーゲルが1988年、ニュージャージー州の解体工場で撮影した地下鉄の廃車輌内の写真だとか。あちこちで話題になっているけれど、大写しになっている新聞は当時のホンモノで。アロハ航空の飛行機の屋根が飛行中に剥がれるという衝撃のニュースを報じた『デイリー・ニュース』紙。一面の見出しになっている“Only God Was Above Us”、つまり“我々の上には(屋根はなく)神様だけだった”という文章がそのままアルバム・タイトルに起用された。
歌詞にもいろいろ往年のニューヨークを想起させる様々な固有名詞が盛り込まれているようなのだけれど、こちらの知識的に追いつかないというか、まだまだぼくには噛み砕けておらず、さっぱりわかりません(笑)。が、もちろん、聞き込めば聞き込むほどに面白さが発見できるのだろうなという予感はたっぷり。冒頭を飾る「アイス・クリーム・ピアノ」という曲で、いきなり“ファック・ザ・ワールド…と君は静かに口にした/誰にも聞こえなかった/ぼく以外の誰にも…”と歌い出された瞬間から、もう何かがありそう、という気分にさせてくれる。
プロデュースはエズラと、長年のコラボレーター、アリエル・レヒトシェイド。ウィル・カンゾネリ編曲によるストリングス・アンサンブルも効果的だし、ちょいちょい導入されるエレクトロニックなテイストの間隙を縫うように顔を出すジャジーな展開とかエスニックな香りとかもいい感じ。
音的には初期の感触が戻ってきている雰囲気もあり。メロディ作りのうまさ、キュートさは相変わらず。シニカルな眼差しと、神聖な手触りと、とびきりの遊び心とが絶妙に交錯する1枚です。次はあまり待たせないでね。お願いします。