NBPファイル vol.95:キャンド・ヒートの缶詰
以前、マイケル・ブルームフィールドやフリートウッド・マックことを取り上げたときにも書いたことの、またまた繰り返しになりますが。
1970年代半ばになって『ニューミュージック・マガジン』誌とかでブルース特集が組まれたり、ちょっとしたブルース・ブームが盛り上がるまで、ぼくたち日本の一般的な洋楽ファンはブルースの何たるかとか、まったくわかっていなかった。
特に1960年代末から1970年代アタマにかけて。ぼくが中学生だったころ。情弱な時代だったから。日本で普通にラジオとか聞きながら体験できた黒人ブルースマンといえばせいぜいB.B.キングくらいで。それも「スルリ・イズ・ゴーン」的なやつ。
それだけに、ロック・フィールドでもわりと取り上げられることが多かった白人のブルース好きアーティストの存在は、けっこう影響力があった。英国勢としては初期フリートウッド・マックとかジョン・メイオールとかチキン・シャックとかクリームとか。米国勢ではポール・バタフィールドとかマイケル・ブルームフィールドとか。
当時、こうした白人ブルース・ロック・アーティストたちから教わったことは本当に多かった。ニセモノ呼ばわりされたりしたこともなくはなかったけれど、彼らの若き情熱がその後のブルース・リバイバルの気運へとつながったことは間違いない。
そしてこの人たち、キャンド・ヒート。この人たちも恩人だ。1965年にロサンゼルスで結成されて、1967年にアルバム・デビュー。ファースト・アルバムの日本盤には『エレクトリック・ブルースの王者キャンド・ヒート登場』って、ものすごい邦題がついていたっけ。以降1969年ごろにかけて、日本のラジオでもちょいちょいシングル曲がかかっていたものだ。
彼らが所属していたリバティ・レコードが日本では東芝の配給だったもんで。中学生時代、東芝が週末にTBSラジオで一社提供していた前田武彦DJの番組でよく聞いたなぁ。なんだっけ? 『東芝ヒットパレード』だったっけ? ベストテン形式で東芝の推し曲を紹介していく番組。「タイム・ウォズ」って曲が大好きだった。
途中ブレイクがあって、ベースがソロでフィルイン・フレーズを弾く。でも中学生だったぼくは超安物のトランジスタラジオしか持っていなくて。音質サイテー。低音とか全然聞こえないもんで。そこは何も音のない、ただのまっさらなブレイクだと信じ込んでいたものです。後になってシングル盤を手に入れて聞いたら、そこにベースが入っていたので驚いたなぁ(笑)。
と、そんなキャンド・ヒート。今なおバンド活動を続けている。もちろん、創設メンバーのひとり、アラン“ブラインド・アウル”ウィルソンが1970年に他界した後、頻繁にメンバーチェンジが繰り返されて。今やオリジナル・メンバーはドラムのアドルフォ・デ・ラ・パラひとりになってしまっているけれど。なんと明日、4月5日にニュー・アルバムをリリースするのでした。
アルバム・タイトルは『ファイナル・ヴァイナル』。綴りが“Finyl Vinyl”という語呂合わせで。ファイナルと言っても“Final”ではない。とはいえ、ちょっと不吉な感じ。バンド結成以来60周年を目前にしての新作。ほんとにラストの1枚にならないことを祈りつつ、明日のリリースを心待ちにしているわけですが。
そんなこんなでスロウバック・サーズデイ恒例NBPプレイリスト、今週はキャンド・ヒート、いきます。新作からの先行公開曲でスタートして、そのあと、ぼくが学生時代よく聞いていた彼らのナンバーをだだーっと並べたセレクションです。
お楽しみください。
- One Last Boogie / Canned Heat (2024)
- Rollin' and Tumblin' / Canned Heat (1967)
- On the Road Again / Canned Heat (1968)
- Going Up the Country / Canned Heat (1968)
- Time Was / Canned Heat (1969)
- Poor Moon / Canned Heat (1969)
- Let’s Work Together / Canned Heat (1970)
- Sugar Bee / Canned Heat (1970)
- Whiskey and Wimmen / John Lee Hooker & Canned Heat (1971)
- Long Way from L.A. / Canned Heat (1971)
- Rockin’ with the King / Canned Heat with Little Richard (1971)
- One More River to Cross / Canned Heat (1974)