Disc Review

Wondrous Afternoon / Pete Molinari (Blind Faith Records)

ワンドラス・アフタヌーン/ピート・モリナーリ

英ケント州チャタム出身のシンガー・ソングライター、ピート・モリナーリ。かつてブルース・スプリングスティーンが“彼のことを何ひとつ知らないとしても、彼は最高だ!”と言ったとか言わなかったとか…。いや、言ったんだよね、きっと。そう。モリナーリさん、そんな感じでなかなかにイケてます。

マルタ島、エジプト、イタリア…さまざまなルーツが渦巻く家庭に育ち、ジャック・ケルアックに触発されて渡米。ニューヨークのイースト・ヴィレッジ、ニューオーリンズ、メンフィス、サンフランシスコと巡ってロサンゼルスに落ち着いて。やがて2006年、かのビリー・チャイルディッシュのキッチンでレコーディングされたファースト・アルバム『ウォーキング・オフ・ザ・マップ』をダメイジド・グッズ・レコードからリリース。

以降も、クラークスヴィル、チェリー・レッドなどレーベルを渡り歩きつつ、ダン・アワーバック、チャド・ブレイク、リンダ・ペリー、ドン・ウォズ、リアム・ワトソン、ジャスティン・コリンズ、ジョーダネアーズらの協力も得ながら着実にアルバム・リリースを重ねて。

で、新作です。去年出た前作『ジャスト・ライク・アキレス』同様、イタリアのブラインド・フェイス・レコードからのリリース。前作でもミックスなどで関わっていたイタリアのディープ・ソウル野郎、ルカ・サピオにプロデュースを任せ、イタリアでレコーディング。サピオ率いるハウス・バンド“イタリアン・ロイヤル・ファミリー”とタッグを組み、従来のフォーク・ロック的なたたずまいをかなぐり捨てて、ぐっとエヴァーグリーンなポップ・テイストを全開にしてみせている。

かなりセヴンティーズ・ポップ・ソウルに接近した仕上がりで。グルーヴと洗練とが心地よく絡み合う。聞いていて実に気分がいい。ほぼ半分を単独で、残りをサピオとの共作で書き下ろしている。デヴィッド・ゲイツとかジミー・ウェッブとかバート・バカラック的なメジャー・セヴンス路線を突進する曲があったり。かと思うと、ドリフターズとヴァレンティノズとの間を絶妙に縫うような曲があったり。曲作りもなかなか巧み。

全部が全部、めちゃくちゃいい曲ってわけではないのだけれど。全曲がいい感じにそこそこの出来…というか(笑)。楽しげにあの手この手を尽くしている感じで。好感が持てる。秋のお散歩BGMに絶好かも。

やっぱりモリナーリさん、1960〜70年代のスウィートでキャッチーなメロディ・センスの頼もしい継承者です。

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