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Disc Review

Safe at Home: Mono Edition / International Submarine Band (featuring Gram Parsons) (Sundazed Music/Modern Harmonic)

セイフ・アット・ホーム:モノ・エディション/インターナショナル・サブマリン・バンド

以前、エヴァリー・ブラザーズのカントリー・ロック・セッション・アンソロジーを取り上げたとき、カントリー・ロックの始祖についてあれこれ書いた。そのときも重要な存在として名前を挙げたのがグラム・パーソンズ。

ご存じの通り、異質な要素を外部から取り込みながらロックがやみくもに拡散を続けていた1960年代末~70年代初頭、時代の流れに逆らうかのように自らの足もとを見つめ直し、カントリー・ロック、つまり“ロックンロール・コンボ編成でカントリーを演奏する”という保守革新ごちゃまぜの斬新な方法論とコンセプトをシーンに対して提示してみせた男だ。

もちろん、この方法論を初めてメジャーなロック・シーンで実現したのは1965年にバック・オウエンスのカントリー・ヒット「アクト・ナチュラリー」をカヴァーしたビートルズだった。同じころ、ローリング・ストーンズも人気カントリー歌手、ハンク・スノウの「アイム・ムーヴィング・オン」をカヴァーしていた。が、パーソンズはこうした方法論を全面的にバンドのテーマに掲げた初めての存在だった。ビートルズやストーンズら外国人の視点からではなく、カントリー音楽の本場である米国出身のアーティストによる試みであったことも大きい。

とはいえ、実のところバンド結成当初、パーソンズはまったくカントリーに関心がなく、バック・オウエンスやマール・ハガードといった人気スターの存在すら知らなかったのだとか。南部生まれ〜南部育ちだけに子供のころから当たり前のようにカントリーを聞いてきたパーソンズながら、そのころはとにかく旬なフォーク・ソングに没頭する青年だったとのこと。実際、インターナショナル・サブマリン・バンドにとって初のシングルとなったノーマン・ジューイソン監督のコメディ映画『アメリカ上陸作戦(The Russians Are Coming, The Russians Are Coming)』の主題歌は、サイケデリック色濃いインスト・ダンス・チューンだった。

が、バンドのギタリストだったジョン・ニュースは大のカントリー・ファン。彼の影響もあって、そのデビュー・シングルのB面で彼らはバック・オウエンスの「トラック・ドライヴィング・マン」をカヴァーした。そのあたりを契機にパーソンズの身体に無意識のうちにしみついていたに違いない南部ならではのカントリー・フィーリングが覚醒。カントリー・テイストのオリジナル曲も作るようになった。ジョージ・ジョーンズやマール・ハガードのヒット曲のカヴァーも取り上げるようになった。こうしたレパートリーをひっさげて、1967年、彼らはいよいよリー・ヘイズルウッドのLHIレコードでアルバムのレコーディングを行なった。

それが1968年にリリースされたインターナショナル・サブマリン・バンド唯一のアルバム『セイフ・アット・ホーム』。パーソンズがカントリー・ロックに初めて本格的に取り組んだ1枚だ。まだまだ未熟な面も見え隠れするものの、のちにフライング・ブリトー・ブラザーズで再演されることになる曲も含むオリジナルと、マール・ハガードやジョニー・キャッシュ、エルヴィス・プレスリーらのレパートリーのカヴァーが同居する若々しいカントリー・ロック・アルバムの誕生だった。

ここに至ってパーソンズは自らのアイデンティティを、白人のブルース――南部人として抗いようのないカントリー・ルーツに定めた。前述した通り、60年代後半といえばアシッド・ロック、サイケデリック・ロックなどがシーンを席巻し、ロックを取り巻く共同幻想がまさに飽和点に達しようとしていた混乱の時代だ。浮ついた幻想に誰もが踊らされているようにさえ思えるあの時代に、しかしパーソンズはもう一度地に足をつけ、今一度自らのルーツを見直そうとしたわけだ。

インターナショナル・サブマリン・バンド自体は結局ヒットチャート上に何ひとつ痕跡を残すこともできないまま解散してしまうことになるのだけれど、パーソンズは同じマネージャーのもとで活動していたザ・バーズと出会い、やはり大のカントリー・ファンだったクリス・ヒルマンと意気投合。本作がまだ世にリリースされていない段階でザ・バーズに正式加入し、名盤『ロデオの恋人(Sweetheart of the Rodeo)』のレコーディングを行なった。その後、短期間でバーズを脱退し、ヒルマンとともにフライング・ブリトー・ブラザーズを結成。2枚の名盤をレコーディングしたあと、また脱退。ローリング・ストーンズとの交流などを経て、1970年代に2枚のソロ・アルバムを残したのち、ドラッグとアルコールの過剰摂取のため26歳の若さで他界してしまった。

そんなグラム・パーソンズにとって、本作はまさに初めの一歩。商業的にはほんの小さな一歩に過ぎなかったかもしれないけれど、音楽的にはのちのシーンに大きな影響を与えることになる重要な一歩だった。それだけに本作『セイフ・アット・ホーム』は過去何度か再発が繰り返されてきた。特に、ライノが2001年に編纂したグラム・パーソンズ・アンソロジーで初お目見えした未発表音源「ニー・ディープ・イン・ザ・ブルース」をボーナス追加し、シド・グリフィンらによる詳細なライナーを添付した2004年のサンデイズド盤は世界中のグラム・パーソンズ・ファンを驚喜させてくれたものだ。

が、今回、またまたサンデイズドがいい形の再発を実現してくれました。今回は「ニー・ディープ・イン・ザ・ブルース」入りのオリジナル・モノ・ミックス10曲に、グラム・パーソンズのヴォーカルとバンドのコーラスをメインにした“ロンサム・ヴァージョン”10曲、演奏のみのヴァージョン2曲を加えた22トラック入り。

歌声がまじ若々しくて泣けてきます。オリジナル・モノ・マスター10曲のみのアナログLPもあり。ヴァイナル・ミー・プリーズのサイト(vinylmeplease.com)のみで扱っているシーグラス・ブルー色のカラー・ヴァイナルも予約受付中。こちらは全世界1000枚限定みたい。きれいだ。欲すぃ…。

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