NBPファイル vol.23:エルヴィスのテンダー・ヴォイス、60年代サントラ編
バズ・ラーマン監督の映画『エルヴィス』、各方面で大評判のようで。1970年以来、かれこれ半世紀以上、エルヴィス・プレスリーの歌声にぞっこんで生きてきた市井の一ファンとしても、なんだか誇らしいというか。むちゃくちゃうれしいです。あの映画をきっかけに、エルヴィスならではの凄みというか、唯一無二のパワーというか、そういったものに改めてスポットが当てられるようになることを心から願うばかり。
歌は世につれ世は歌につれ…と、よく言うけれど。確かに。歌は世につれる。つれまくる。でも、世は歌につれない。めったにつれない。しかし、そんな、めったにない瞬間を軽々と現実のものにした稀有な存在。歌で世をつってみせた男。それこそがエルヴィスだ。1950年代半ばに訪れたエルヴィスの登場こそ、間違いなく20世紀の音楽界で起こった最大の事件だった。そんなことを今回の映画は今の時代にわかりやすい形で見事再構築してくれた感じで。わりと長尺の作品ながら、まじ、時間を忘れて盛り上がった。
というわけで、映画『エルヴィス』、もちろんむちゃくちゃいい作品だ、と。それを前提に少しだけ余計なチャチャを入れさせてもらうと。実はちょっぴり不満な点もあって。たとえば主要登場人物中、プリシラさんとかジェリー・シリングとか、今も存命中の方が史実より“いい人”っぽく描かれすぎている気がするところとか(笑)、1950年代のエルヴィス登場の衝撃と、1970年代のエルヴィスが抱え込まざるを得なかった葛藤とをより色濃く対比しながら浮き彫りにするためか、1960年代中盤の活動がほぼ全面的に無視されているところとか。
ぼくは劇中でも感動的に描かれている1968年のカムバック・スペシャルをきっかけにエルヴィスのとりこになった後追い組なので。リアルタイム体験組の諸先輩方のような実感をもって堂々と主張することはできないのだけれど。なんか1960年代、軽んじられすぎじゃない? と思ってしまって。大滝さんに怒られるぞ、的な。
まあ、このポイントについて語り出したら三日三晩かかりそうなので、今回はこらえておきますが。そんな思いも含めて、スロウバック・サーズデイ恒例、今週のNBPプレイリストは、映画ではなんだかなかったことにされている感じの1960年代エルヴィス主演映画のサウンドトラック・アルバムからの曲を12曲選んでみました。
しかも、すべて非ロックンロール系(笑)。
こりゃさすがに賛否分かれそうなプレイリストですが。まあ、趣味のブログだもの。お好きな方のみ、ジェントリー&ソフトリーな1960年代エルヴィスの歌唱を存分にご堪能ください。
Gentle and Tender Voice of Elvis, From ‘60s
- 君は僕のもの(All That I Am)
1966年11月公開『カリフォルニア万才(Spinout)』より - ポケットが虹でいっぱい(Pocketful of Rainbows)
1960年11月公開『G.I.ブルース(G.I. Blues)』より - アカプルコの恋唄(You Can't Say No In Acapulco)
1963年11月公開『アカプルコの海(Fun In Acapulco)』より - 両手に花だが(One Boy, Two Little Girls)
1964年3月公開『キッスン・カズン』より - 恋のボサノヴァ(Almost In Love)
1968年10月公開『バギー万才!!(Live a Little, Love a Little)』より - エンジェル(僕の天使よ)(Angel)
1962年4月公開『夢の渚(Follow That Dream)』より - キスメット(Kismet)
1965年11月公開『ハレム万才(Harum Scarum)』より - 似合いのカップル(A Boy Like Me, a Girl Like You)
1962年11月公開『ガール!ガール!ガール!(Girls! Girls! Girls!)』より - 僕はあやつり人形(Puppet On a String)
1965年4月公開『フロリダ万才(Girl Happy)』より - あなたにそっくり(They Remind Me Too Much of You)
1963年4月公開『ヤング・ヤング・パレード(It Happened At The World's Fair)』より - いつまでも愛して(Please Don't Stop Loving Me)
1966年3月公開『フランキー・アンド・ジョニー(Frankie And Johnny)』より - ひとりぼっちのバラード(I Need Somebody to Lean On)
1964年6月公開『ラスヴェガス万才(Viva Las Vegas)』より
あと、ついでなので、新世代の個性とエルヴィスの歌声が交錯する映画『エルヴィス』のサントラのほうも、ご興味ある方はぜひ。