Disc Review

Oochya! / Stereophonics (Ignition Records)

ウーチャ!/ステレオフォニックス

結成30周年、デビュー25周年という節目の年なのだとか。ウェールズが生んだUKトップ・バンド、ステレオフォニックス。ということで、フロントマンのケリー・ジョーンズは2008年の『ディケイド・イン・ザ・サン』以来となるベスト盤第2弾を作ろうと、バンドのアーカイヴをあれこれひっくり返していたところ…。

ふと忘れていた未発表曲とか、一部未完成のまま放置していた曲とか、シングルのカップリング曲とか、そういうものが次々掘り起こされて。それらの完成度が思いのほか高く、ジョーンズを大いに刺激。彼の中で一気に新作への意欲が高まって。アーカイヴからの要素と書き下ろしと、つまり過去と現在とが共存する全15曲が詰まった、60分超えのスタジオ・アルバム12作目『ウーチャ!』が完成した、と。

1997年に『ワード・ゲッツ・アラウンド』でアルバム・デビューして。一気に注目を集め、1999年のセカンド『パフォーマンス・アンド・カクテルズ』は初登場全英1位。以来、出すアルバム出すアルバム軒並みナンバーワンに。途中、一瞬『キープ・カーム・アンド・キャリー・オン』あたりでチャート・アクションが地味になったこともあったけれど、基本的には売れまくり続けて。

が、その反動か、2019年に出た前作『カインド』は意外なほどパーソナルで内省的な仕上がりで。あ、これからはそういう方向に向かうのかなと感じていたところ。今回、掘り起こされた過去音源からの刺激がいい形で機能したようで、またまたジョーンズとバンドに活きの良さが戻ってきた。ジョーンズによれば、アルバム・タイトルの“Oochya!”というのは、“Let’s have it! Come on, let’s do it!”みたいな意味だとのこと。“よし、行くぜ!”的な? 本作『ウーチャ!』はステレオフォニックス本来の奔放なギター・ロック・サウンドを多彩な切り口で楽しめる1枚だ。

オープニングを飾る「ハンギング・オン・ユア・ヒンジズ」は豪快にリフで引っ張るタイプのロック・グルーヴもの。続く「フォーエヴァー」は2008年のシングル「ユーアー・マイ・スター」のカップリングだったミディアム・ポップ・チューン。そのリメイク・ヴァージョンだ。「ユーアー・マイ・スター」は前述ベスト『ディケイド・イン・ザ・サン』に入っていたけれど、「フォーエヴァー」のほうは未収録。ということで14年を経て、うれしいアルバム入り実現だ。で、アーシーな「ホエン・ユー・シー・イット」を挟んで、いかにもステレオフォニックスという感触の「ドゥ・ヤ・フィール・マイ・ラヴ?」へ。

この冒頭4曲の流れだけで、もうばっちり。また売れそう(笑)。

ステディなビートと切ないメロディに乗せて自伝的な歌詞を綴る「ライト・プレイス・ライト・タイム」とか、AC/DCとか想起させる思いきりのいい「ラニング・ラウンド・マイ・ブレイン」とか、ピアノをバックにケリー・ジョーンズのシンガー・ソングライター的な側面が存分に発揮された「エヴリ・ドッグ・ハズ・イッツ・デイ」とか、切れのいい「ユーアー・マイ・ソウル」とか、U2のリリカルな味をこの人たちなりに受け継いだような「オール・アイ・ハヴ・イズ・ユー」とか、ソウルフルな「メイド・ア・メス・オヴ・ミー」とか、2013年の『グラフィティ・オン・ザ・トレイン』の日本盤ボーナス・トラックとして既出のスモーキーな隠れ名曲「シーン・ザット・ルック・ビフォー」とか。他にもいい曲ぞろい。

初回のみ紙ジャケ仕様。これ、ポップ・アートっぽいデザインから見ても絶対紙ジャケのほうがよさげ。つーか、だったらアナログ(Amazon / Tower)のほうが断然いいな。2枚組だけど。

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