Disc Review

Untidy Soul / Samm Henshaw (Dorm Seven)

アンタイディ・ソウル/サム・ヘンショウ

サウス・ロンドン出身のUKソウル系シンガー・ソングライター、サム・ヘンショウ。この人のことを知ったのは2018年かな。「ハウ・ダズ・イット・フィール?」とか「ブローク」とか、ジャジーな要素なども適度にまぶされた1970年代ニュー・ソウル感覚を継承したような、でも、きっちり21世紀に呼吸しているような、過去と現在が素敵に絡み合うシングルを立て続けにリリースしているころ。

それですっかり気に入って、リリースをさかのぼり、2015年のデビューEP『ザ・サウンド・エクスペリメント』や翌年の第2弾EP『ザ・サウンド・エクスペリメント2』に接して。まだどこか荒削りだけれど柔軟なその個性を知った、と。そんな感じ。

2019年には「チャーチ」ってシングルが日本でも車のCMに使われたり、そこそこ話題になった。いい兆しだった。勢いに乗って2020年の5月には来日も決定。が、コロナ禍で当然のように延期となって。振替公演も発表されたものの、それも延期延期の繰り返し。日本でのブレイクのタイミングをすっかり逃しちゃった感もあり。

でも、これで少しは盛り返すかな。これまでEPかシングルしかリリースしていなかったサム・ヘンショウにとっての初フル・アルバムがついに出たのでした。まさに待望の1作。それが今日紹介する『アンタイディ・ソウル』。

乱雑なソウル、と。そんなアルバム・タイトル通り、いろいろな時代の多彩なソウル感覚がポップに、奔放に、躍動的に交錯する仕上がりで。実に楽しい。去年までにリリースを重ねていたシングル・チューンも満載。なかなかアルバムを出せなかった経緯を踏まえてか、1トラック目にイントロとして入っている短い語りのタイトルは「スティル・ノー・アルバム」(笑)ときた。

牧師さんの息子で、影響を受けた存在がカーク・フランクリン、ローリン・ヒル、マーヴィン・ゲイ…というサムさんだけに、ゴスペル、ヒップホップ、ニュー・ソウル、ジャズなど、時代もジャンルも飛び越えた地点を自在に行き来しながらの、なんとも刺激的な、しかしメロウでスウィートで心地よいミュージック・トリップだ。

2015年のデビューはUKコロムビアというメジャー・レーベルからだったものの、その後、2020年あたり以降はあえて独立したのか、クビになったのか、事情は知らないけどインディ系へ。挫折っちゃ挫折なのかな。でも、そのぶん迷いなく、自分に正直な音楽活動を満喫している感じもあって、悪くない。

ゴスペルライクで、ジャジーで、オールドスクールで。いい。やっぱライヴ見たい。

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