オプティミズム/ヤナ・ホーン
ヤナ・ホーンは、テキサス州オースティンを拠点に活動するシンガー・ソングライター。
5〜6年前、リザヴェイションズというバンドの一員としてアルバムを自主制作したことがあった。そのあと、一時期オースティンのサイケデリック/カントリー・ロック・バンド、ナイフ・イン・ザ・ウォーターに新ヴォーカリストとして加わったり。最近はクロノファージのサラ・ビームズ(ベース)と、ディープ・タイムのアダム・ジョーンズ(ドラム)と3人で“アメリカン・フレンド”という、思いきり内省的というか、ダウナーというか、ヒプノティックというか、こじれまくりというか、不思議な3人組スローコア・バンドを組んでEPをリリースしたり…。
いろいろなシチュエーションで静かな試行錯誤を続けてきた彼女が初ソロ・アルバムをリリースした。というか、もともと2020年に地元で自費出版されたものを、今年になってフィラデルフィアのノー・クォーター・レコードが広く再発したという流れ。
自ら奏でるアコースティック・ギターを中心に据え、ナイフ・イン・ザ・ウォーターのバンドメイトでもあるアーロン・ブラウントのギターや、ヴィンス・デルガドのベース、イアン・フィリップスのドラム、ベルフューリーズのマイク・モルナーのギター、サラ・ラ・プエルタ(タイミングが合わず紹介しそびれたけれど、この人が去年リリースした『ストレンジ・パラダイス』ってデビュー・アルバムもよかったなぁ…)のピアノ、デレク・フェルプスのトランペットなど、オースティンのインディ・シーン仲間たちによる必要最低限のサポートをそっと添えた感じの、超ナチュラルな1枚。そんな音像に乗せて、曖昧な内省を、しかし的確に、精度高く綴る…みたいな。
レイモンド・カーヴァーが好きらしく、なるほど、どの曲にもカーヴァーに通じる、シンプルで、シャープで、ディープで、ミニマムな感触が漂っているような。聖書っぽいイメージを引用するなど、偉大な先達、レナード・コーエンからの影響も強そう。不思議な吸引力をたたえたアルバムです。