Disc Review

200 Motels: 50th Anniversary Edition Super Deluxe Box Set / Frank Zappa (Zappa Family Trust/UMe)

200モーテルズ:50周年記念エディション・スーパー・デラックス・ボックスセット/フランク・ザッパ

フランク・ザッパに興味を持って、彼の音楽をいろいろ聞くようになった人が出くわすいくつかの“高い壁”。そのうちのひとつかなぁ。『200モーテルズ』。

ザッパとトニー・パーマーが脚本・監督を手がけた同名映画のサウンドトラック・アルバムで。時期的にはフロ&エディやジョージ・デューク、エインズレー・ダンバーらが在籍していた時期のマザーズによる作品ということになるのだけれど。実際はバンドによるパフォーマンスと、ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラによるクラシカルな、というか現代音楽的な演奏とが半々。ザッパが4年以上かけて書き上げた作品群の集大成的なLP2枚組だった。

ぼくは1974年か75年になってから輸入盤LPのバーゲンでこの2枚組を手に入れて。映画自体を見る前にアルバムのほうを聞いてしまったので、初聞きのとき、アヴァンギャルドな現代音楽とか、マザーズによる過激なロック・チューンとか、かと思えばハイパーなカントリーみたいなやつとか、ノヴェルティR&Bっぽいやつとか、フリー・ジャズっぽいアプローチとか、コーラスによる短いスニペットとか、いろいろな要素が、くるくる、次々、アナーキーなまでに現われては消える展開にくらくらしたことを覚えている。

まあ、コンセプチュアル・アートとかに興味だけは抱いていた、いろいろとかぶれやすい若き日ではあったので、当初はなんとなくがんばって聞き続けてみたものの。結局はよくわからないまま放置、みたいな(笑)。そんな感じになってしまったほろ苦い思い出の盤ではありました。

やがて、いろいろ経験を積むうちにこちら側の需要感覚もだいぶ柔軟になってきて。ビーチ・ボーイズの『スマイリー・スマイル』あたり同様、なんかツボをひとつ自分なりにつかむと、かなり楽しく接することができるようになる作品という感じになってきて。

ぼくの場合は、A面だと「ミステリー・ローチ」とか「ロンサム・カウボーイ・バート」、B面だと「ショウヴ・イット・ライト・イン」、C面だと「ダディ・ダディ・ダディ」、D面だと「マジック・フィンガーズ」あたりを核に、その前後のワケわからない曲にも興味を広げていく、みたいな。そういう聞き方で楽しむようになったものだ。そうなってみると、これが面白くてたまらない作品にじわじわなってきたりして。ああ、懐かしい。

だいぶたってからリンゴ・スターとかも出ている例の映画も見た。まあ、そっちもロック・ミュージシャンのツアー生活をザッパ流に描いたシュールかつブラックなファンタジー・コメディという感じで。これまたなんだかよくわからない仕上がりではあったのだけれど。多少はサントラのほうの意味合いも腑に落ちたというか。

そんなサウンドトラック・アルバムの発売50周年ボックスセット、出ました。CD6枚組です。オリジナル・アルバム収録曲の2021年最新リマスター音源に加え、未発表音源、デモ音源、スタジオ・アウトテイク、ワーク・ミックス、インタビュー、映画広告など、いろんな素材がぶちこまれている。ザッパのアーカイヴからずいぶんと大量の音源が発掘されたようで、映画の初期編集の様子がわかるダイアログ・リールからもたっぷり収録。

なもんで、昨日紹介したデヴィッド・ボウイの箱同様、こちらも最後のほうは全然聞けてません(笑)。これも年末年始のお楽しみだな。

映画ポスターのレプリカの他、キーホルダーとか、ザッパの顔がデザインされた“Do Not Disturb”の札とか、モーテルっぽいオマケ、1971年当時のオリジナル・サウンドトラック・パッケージなども同梱。遊び心が楽しいです。

2枚組のCD、LP版もあり。

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