Disc Review

Magic Mirror / Pearl Charles (Kanine Records)

マジック・ミラー/パール・チャールズ

パール・チャールズ。2018年の初フル・アルバム『スリープレス・ドリーマー』が、“ジューン・カーター・ミーツ・ラナ・デル・レイ”とか、“ここ数年で最良のカントリー・ポップ”とか評されてそこそこ話題になっていた米ロサンゼルスのシンガー・ソングライターですが。

確かにあのアルバム、曲によってはペダル・スティールとかが印象的に鳴って、時に往年のグラム・パーソンズのようだったり、バッキンガム/ニックス期のフリートウッド・マックのようだったり。なもんだから、なんとなくそっちのコズミック・カントリー方面に寄せて語られることが多かったのもうなづける。

かつてクリスチャン・リー・ハットソンと組んでいた“ザ・ドリフトウッド・シンガーズ”なるバンド名義のシングルとかアルバムとかも、もう、完全にそっち系。ちょっとサイケでアシッドなカントリー・デュオ作だった。さらに、2015年の6曲入りEP『パール・チャールズ』あたりを貫いていた、ちょっとダークでトゥワンギーなムードも魅力的だったし。

そういえば彼女、去年、Xixaと組んでナンシー・シナトラ&リー・ヘイズルウッドの「サマーワイン」をカヴァーしたりしていたけれど、そういうオールディーズものを視野に入れる際の、どことなく“やばめ”の眼差しにも惹かれる。

と、そんなパール・チャールズの新作。出ました。フル・アルバムとしては前述した『スリープレス・ドリーマー』に続く2作目だ。

今回はちょっと方向性をマイナーチェンジ。もちろん、曲によってはスティール・ギターやバンジョーが引き続き使われてはいるものの、カントリー臭は大幅に後退。むしろ1960年代後半〜70年代半ばっぽいAMソフト・ポップ色が強調された感じの仕上がりだ。レコード会社のサイトでリリース・インフォメーションを読んでみたら、“独自のカントリー・ディスコ・サウンド”みたいな表現も見受けられた。

そう。以前からこの人の自作曲にはいつも実はそこはかとなく、ちょっとチープ目のポップ・ソウル感覚みたいなものが漂っていて。ぼくなんかはむしろそっちに惹かれていたクチなのだけれど。その辺の魅力が今回、ぐっと表面に浮き出てきた感じ。なんだか楽しい。

オープニングからいきなりABBAの「ダンシング・クイーン」みたいなレトロ・ディスコ・ムードが炸裂する。その後も、ちょいソウルフルな味がにじみ出るマイルドなポップ・チューンがずらり。切ないバラードものはもちろん、ポップ・テイスト溢れるアップテンポ曲でも、やり場のない孤独感とか、寂寥感とか、女の子が成長する中で感じるいろいろな思いとか、そういうもろもろと向き合った内省的な表現が聞き取れたりして。ちょっとしみる。

まあ、音作りの面ではそれなりの信念と確信のもと往年の美学に真っ向から挑んでいる痛快感があるものの、プレゼンテーション的にはどこか気恥ずかしげで及び腰な風情もあり。その辺、微妙に評価が分かれるところかもしれないけれど。いずれにせよ、もっともっと注目されていい人だと思います。

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