Disc Review

Shore / Fleet Foxes (ANTI-)

ショア/フリート・フォクシーズ

あ、最初にお断わりしておきます。今回のブログ更新のテーマは、まあ、確かにフリート・フォクシーズが突然ストリーミングで配信してくれた新作『ショア』のことなんですけど。あんまりちゃんと内容には触れていません(笑)。申し訳ない。さすが話題のアルバムということもあり、いろいろなサイトに詳細な紹介が掲載されている思うので、そっちまかせってことで。

テキトーな本ブログは、いきなり関係なさそうな与太話からスタートします。

ノージに教えてもらってローリング・ストーン誌が新たに選び直したオールタイム500アルバムズのリストを見てみたら。2003年版では1位だったビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』がなんと24位まで大きく後退。3位だった『リヴォルヴァー』も11位へ。今回ビートルズでいちばん順位が高かったのは前回14位から5位にランクアップした『アビイ・ロード』。

激変していて。まあ、アーティストたちも含めたいろいろな人の投票で決めているようなので、“オールタイム”と銘打ってはいるものの、時代時代の気分とか、再発状況とか、そのあたりを大きく反映した結果になっている感じ。そのあたり承知の上で気軽にリストを眺めてみるのがよさそうではあるのだけれど。

そんな激変の中、しかし、ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』が前回同様2位というポジションをキープしていたのがうれしい。超うれしい。もともと時代性とか、社会背景とか、そういったものと隔絶されたところで制作され、それゆえ発売当初はむしろ正当に評価されなかった1枚だけに、時代の気分がどんなに移り変わろうとその真価は揺るがない、と。そういうことかなー。

ノージも言っていたけれど。こういうわりとメジャーなオフィシャル系ランキングでビーチ・ボーイズがビートルズの上にランクするのは珍しいというか。いやいや。なんだかとてもうれしいじゃないですか。

ただ、2位のままなんだよね(笑)。ビートルズを押さえたと言っても、1位になるわけじゃないところがなんともまたビーチ・ボーイズっぽいというか。ちなみに今回の1位は前回6位から一気にランクアップしたマーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイング・オン』。こういうの見ると、やっぱり社会背景とか時代性とかに合致するメッセージってのも必要なのかなと思ったりも…。

と、まあ、そんなふうにビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』というアルバムの時を超えた存在感にまた感服したわけですが。実はちょっと前にも、同じく『ペット・サウンズ』の永遠性というか、タイムレスな魅力を感じさせるエピソードに出くわしていて。それがフリート・フォクシーズ絡みだった、と。そういうことです。

ビーチ・ボーイズの中心メンバーだったブライアン・ウィルソンのツイートで知ったのだけれど。フリート・フォクシーズのロビン・ペックノールドがSNSでブライアン/ビーチ・ボーイズに謝辞を述べていて。いわく、フリート・フォクシーズの新作アルバム『ショア』の収録曲のひとつ「クレイドリング・マザー、クレイドリング・ウーマン」に『ペット・サウンズ・ボックス』収録の「ドント・トーク」のアウトテイク音源の短いスニペットをサンプリングして使用させてもらいました、ティーンエイジャーだったころこの音源をずっと聞いていて、声だけでブライアンがどれほどのものを構築しているかに驚嘆しました、どんな音楽よりも自分の人生を変え、導いてくれました…と。

実際のところ、「クレイドリング・マザー…」をぱっと聞いても、アタマのカウント以外ほとんどどこに何がサンプリングされているんだかわからないのだけれど(笑)。

ただ、『ショア』というアルバム全体を聞いてみて改めて感じた。ロビンにとって『ペット・サウンズ』期にブライアン・ウィルソンが繰り広げていた試行錯誤というのは大きなインスピレーションになっているのだろうな、と。音楽的なスタイルはまるで違うっちゃ違うものの、声を中心にさまざまな音をレイヤーのように重ねていく世界観には共通項が多い。

フリート・フォクシーズは以前のライナーノーツでも『サーフズ・アップ』に触れたりしていたし。今回の“ショア=海辺”というアルバム・タイトルにも“ビーチ”のイメージが二重写しになるし。なにやらロビンはサーフィンをしていて死にかけたことがあるらしく、それも、やはりサーフィンしているときにワイプアウト、ボードが目の前をかすめて死にそうになって以来、サーフィンはやらなくなったというブライアンの体験談と重なるし。

何よりも、今回のフリート・フォクシーズの新作、バンド・メンバーのうち制作に大きく絡んでいるのがロビン・ペックノールドだけだそうで。他のメンバーの代わりにグリズリー・ベアのクリストファー・ベアとダニエル・ロッセン、ウッズ〜ベイビーズのケヴィン・モービー、オ・テルノのチン・ベルナルデス、ウォークメンのハミルトン・リーサウザーらが協力している。

このあたりも、他のメンバーが日本を含むワールド・ツアーに出ている間、地元ロサンゼルスの腕ききセッション・ミュージシャンたちと組んで『ペット・サウンズ』の濃密なバックトラックを一人で作り上げてしまったブライアン・ウィルソンのアティテュードに通じるものがあるし。

まあ、そんなことを身勝手にイメージしながら、ビーチ・ボーイズ経由でフリート・フォクシーズの新作を楽しんでいる、と。今回はそういうご報告でした(笑)。

ものすごく雑な言い方で申し訳ないけど、フリート・フォクシーズの『ショア』、ちょっと不安定なニュアンスもはらみつつ、そうした未完成感も込みにしていいアルバムだと思う。過去の諸作と表面的な手触りがちょっと変わった感もあるけれど、ロック、フォーク、カントリー、ゴスペルなど米国ルーツ音楽の要素にワールド・ミュージック的な推進力を加味し繊細なアレンジと美しいハーモニーで独自の音像を構築してみせる…みたいな在り方はそのまま。持ち前の“バロック・ハーモニック・ポップ”は健在という感じか。

制作期間が新型コロナウイルスのパンデミック下にあったことも反映した、これまで以上に内省的に深化しつつ、しかし俯瞰した視点も共存させた歌詞の世界観も印象的だった。俯瞰した視点といえば、1曲目、いきなり最初に歌い出すのがロビンではなく、ナイジェリア出身のウワデ・アケレ(で、読み方いいのかな。Uwade Akhere)って人だったり。このあたりのあえて“引いた”アプローチも面白い。

フィジカルは来年初頭にリリース予定

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