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Disc Review

The Jazz Funk Collection / Donald Byrd & The Blackbyrds (Cherry Red)

ザ・ジャズ・ファンク・コレクション/ドナルド・バード&ザ・ブラックバーズ

ぼくはドナルド・バードというトランペッターがかなり好きで。もちろん、アート・ブレイキーをはじめとする大御所たちの下、張りのある中音域の響きを活かしつつ、これでもかとアイデアに富んだソロを正確な音程で繰り出していた1950年代のプレイも最高だし、同じデトロイト出身のバリトン・サックス奏者、ペッパー・アダムスと組んでぶりぶりにファンキーでキャッチーなハード・バップをぶちかましていた1960年前後のプレイとかも大好き。バード/アダムスによる1961年の『ザ・キャット・ウォーク』とか今なお愛聴しているごきげん盤だ。

でも、そのあたりは世代的に後追いで聞いたもので。ぼくがリアルタイムに接していたドナルド・バードはちょっと違う。それより後、フュージョン/クロスオーヴァー時代のドナルド・バード。これです。あんなの、ジャズじゃねーよ、とか、硬派なジャズ・ファンさんたちからボコボコにされていた時期。ぼくもこれをジャズと呼ぶのはどうなんだろうと首をかしげつつ、まあ、でもジャンルはどうでもいいや、と、そのキャッチーなアプローチを存分に楽しませてもらっていたものだ。クルセイダーズとドナルド・バードだったなぁ、あのころは。断然。

てことで、今日紹介する本アンソロジーは、ぼくにとってまさにドナルド・バードど真ん中って感じ。1973年から1982年まで、オリジナル・アルバムで言うと当時ブルーノート最大のヒット作となった『ブラック・バード』以降、『ストリート・レディ』『ステッピング・イントゥ・トゥモロウ』『プレイシズ・アンド・スペイシズ』『カリカチュアズ』などを経てエレクトラからの『ファンキン・アップ・マイ・ライフ』や『ラヴ・バード』あたりに至るまでの歩みを集大成したCD3枚組。海外では4月にリリースされた盤ながら、ちょっと遅れて日本盤も出た。てことで、遅ればせながら浮かれ気分で紹介させていただきます。

ドナルド・バードは1969年のアルバム『ファンシー・フリー』以降、従来のハード・バップ路線を離れて一気にフュージョン~ソウル路線へと舵を切ったわけだけれど。そんな彼の1970年代を語るうえで欠かせない存在が、フォンスとラリーのミゼル兄弟だ。兄フォンスは、ハワード大学で教鞭を執っていたバードの教え子であり、モータウン・レコードの専属ソングライターとしても活躍していた男。やはりハワード大学出身の弟ラリーは、フォンス作品のレコーディング・セッションに欠かせないミュージシャン/エンジニア。

そんな彼らに恩師ドナルド・バードは大きな転機をもたらした。1971年、フォンスはバードのアルバム『エチオピアン・ナイツ』のレコーディング・セッションを見学。ジャズとファンクをいきいきと有機的に融合しようとするバードの試行錯誤に大いに触発されたという。フォンスは恩師の後を追い、自らもこの斬新な音楽性を本格的に追求することを決意。ラリーとともに“スカイ・ハイ・プロダクション”を設立して、様々なミュージシャンのプロデュースを手がけていくことになる。

その記念すべき第1弾プロデュース作となったのが、1972年に録音されて翌年リリースされたドナルド・バードのアルバム『ブラック・バード』だった。高校時代、この盤を初めて聞いたときの気分は今も忘れない。特にタイトル・チューン。ジョー・サンプル、デヴィッド・T・ウォーカー、チャック・レイニー、ハーヴィー・メイソンらが提供する、シンプルながら吸引力に満ちたビートをバックにクールに舞うロジャー・グレンのフルートとバードのトランペット。そして軽やかなヴォーカル。妙に新鮮だった。

次のアルバム『ストリート・レディ』もかっこよかった。折からのニュー・ソウル〜ブラック・ムーヴィー・ブームに乗っかって、ラリー・ミゼルとドナルド・バードが作り上げた架空のブラック・ムーヴィーのサウンドトラック的アルバム。夜のストリートにうごめく娼婦とポン引きを主人公に据えた物語が全編を貫くコンセプト・アルバムで。これもよく聞いたなぁ。新宿のジャズ喫茶とかでもしょっちゅうかかっていたっけ。

もはやジャズじゃねーよ、という声が特に大きくなったのは1976年のアルバム『カリカチュアズ』のころか。あのアルバムの冒頭を飾っていた「ダンス・バンド」あたりになると、もはや往年のジャズらしさなど皆無。真っ向からソウル・ミュージック~ダンスR&Bの美学を極めた仕上がりだった。バードのトランペット・ソロもあるにはあるものの、ホーン・セクションはむしろアンサンブルでバッキングに徹している感じ。主役はジェイムス・ブラウンを意識したようなファンキーな歌声と、えんえん同じフレーズを繰り返し続けるハーヴィー・メイソンのドラムとジェイムス・ジェマーソンのベースだった。

むしろアイザック・ヘイズ、カーティス・メイフィールドあたりと触発し合いながらの試行錯誤。そういう視点から再評価したい一連の作品群であります。ジャズかどうかはまた別の話…ってことで。

本アンソロジーには、当時のドナルド・バードのリーダー作品からの音はもちろん、ハワード大学のバードの教え子たちによって結成され、ミゼル兄弟とバードのプロデュースの下、1973年から1981年にかけて10曲以上のR&Bヒットを放ったザ・ブラックバーズの音源も多数収録されている。日本でも大ヒットした1975年の「ウォーキング・イン・リズム」ももちろん入ってます。楽しいです。

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© 2020 Kenta Hagiwara