ハナ・ホワイト&ザ・ノルディック・コネクションズ/ハナ・ホワイト&ザ・ノルディック・コネクションズ
今日は数カ月に一度の通院の日だったもんで。通常よりちょっと遅めのブログ更新です。しかし、この時期、本当に医療関係のみなさん、大変だなぁ。感謝しかありません。とか、まじ、心から思いつつも、自分の診察の順番待ちをしてると、んー、もー、何やってんのかなー、早くしてくんないかなー、まだかなー…とか、つい思ってしまいがちな自分の器の小ささが情けない。
というわけで、今朝、診察の順番待ちしながら聞いていたアルバムを紹介しておきましょう。これまで単独で活動してきたイギリスの女性シンガー・ソングライター、ハナ・ホワイトがノルウェー南西部の港湾都市、ベルガン在住の4人のミュージシャンと新たに組んだバンドの初フル・アルバム。去年、バンドとしてのデビュー・シングル「シティ・ビーツ」をリリースしてちょこっと話題になっていたけれど、このほどめでたくアルバムも完成しました。ちなみに、このバンドでギターを弾いているケイロン・マーシャルって人がハナさんの旦那さまらしい。
ソロ・アルバムではフォークを基調に、時折ケルトっぽい感じも盛り込みつつ、多彩な音作りを聞かせていたハナさん。でも、バンドとして目指しているのは古きよきアメリカン・カントリーって感じみたい。
なのだけれど。面白いことに、イギリスとノルウェーと、欧州目線で再構築されたカントリーというか。北欧のフィルターで濾過したカントリーというか。ペダル・スティールとかトワンギーなエレクトリック・ギターとか、その手の楽器もいろいろ鳴っているのだけれど、不思議とアーシーな感じがしない。ABBAのウォール・オヴ・サウンドやカーディガンズのソウル・グルーヴあたりと一緒で、さっぱりアク抜きされたカントリー、みたいな。それがなんだか面白い。
アクのないカントリーというと、たとえばエミルー・ハリスとか思い出すけど、こちらに比べるとエミルーすらかなりえぐく感じる。リンダ・ロンシュタットやドリー・パートンっぽい曲もあるけれど、リンダのように華やかな艶をどーんと放つわけでもなく、ドリーのように強烈なコブシをかますわけでもない。フォーク/カントリー・ベースの1970年代アクトとしての、たとえばカーラ・ボノフとかニコレッタ・ラーソンとか、そういう感触もあるけど、これまた彼女たちとも微妙に違う。
浄水です。ブリタなみ(笑)。
どこかのレビューを眺めていたら、彼女たちの音楽のことを“A Scandinavian UK-Americana miracle”と評しているものがあって。スカンジナビアン・UK・アメリカーナ…って。なんだかわけわかんない(笑)。ルーツが揺らぎまくり。もはや、どこの国のものでもないっすね。
ノルウェーのスタジオでほぼ一発録りのような形でレコーディング。愛を失うこと。別れを決意すること。でも、許し、忘れること。そして、未来に向かって足を踏み出すこと。オープニングを飾る「ネヴァー・ゲット・アロング」や、続く2曲目「スタート・アゲイン」からして、そうしたカントリーの定型的なテーマが綴られている。
愛する人を失ったあとの未練と、彼に頼り切りすぎた自身への悔恨と…。そんな思いを切々と歌う「ホエン・ユーアー・ノット・アラウンド」も、なかなか。ぐっときた。もちろん感触は同様にアク抜き系で。アク抜き版のパッツィ・クラインというか(笑)。土臭さをまるで感じさせないスライド・ギターやハモンド・オルガンもうまい具合にフィットしていて。まさにこういう個性ということなのだろう。
犯した罪にさいなまれる、そっち系の定型テーマを扱った曲もある。ハナさん、けっこう政治的な方面でもアクティヴィストとして活動しているらしく、貧困とか格差問題に踏み込んだメッセージ性の強い歌詞の曲もあったり。いずれにせよ、ちょっと気になる個性です。