ライヴ・アット・ザ・フォーラム/ザ・テスキー・ブラザーズ
去年の夏、セカンド・アルバム『ラン・ホーム・スロウ』が出たときも大騒ぎさせてもらったテスキー・ブラザーズ。ジョシュ(ヴォーカル&ギター)とサム(リード・ギター)のテスキー兄弟に、リアム・ゴフ(ドラム)とブレンダン・ラヴ(ベース)が加わったオーストラリアの4人組ブルー・アイド・ソウル・バンドですが。
彼らが本領を発揮する“生”の盛り上がりをとらえたライヴ・アルバムが出た。スタジオ盤を2枚出して、そのあと定評あるライヴの模様を収めたアルバムで勝負をかけるソウルフルな白人兄弟グループ…というのは、大先輩、オールマン・ブラザーズ・バンドにも通じるやり口で。それだけでもちょっと盛り上がる。
まあ、テスキーズの場合、オールマンズほどジャジーな要素は強くなく、よりサザン・ソウル方面へめがけてまっしぐら的なアプローチを展開しているわけだけれど。なんか、その熱い心意気に共通項を感じてしまう。
去年の9月、セカンド・アルバムのリリースを受け地元メルボルンのフォーラム・シアターで行なわれた4夜連続のソールド・アウト・コンサートの模様。劇場にアナログ・マルチ・テープレコーダーを持ち込んでのライヴ・レコーディングだ。ギター×2、ベース、ドラムというバンドの基本編成に、サポートでキーボード奏者、ヴァイオリン&ペダル・スティール奏者、バック・コーラス2人、および金管のみ3本のホーン・セクションが加わる。
2017年のファースト・アルバム『ハーフ・マイル・ハーヴェスト』から4曲、翌2018年に出たデラックス・エディションのボーナス・トラックが2曲、去年のセカンド『ラン・ホーム・スロウ』から7曲、そしてジョン・レノンの…というか、ダニー・ハザウェイ・ヴァージョンを意識したような「ジェラス・ガイ」のカヴァーという全14曲。まだ数少ないリリースの中から代表曲をピックアップし、勢い満点のライヴ・アレンジで聞かせてくれる。
南半球で録音されたライヴ盤とは思えない、活きのいいマッスル・ショールズ・サウンドというか。「ハネムーン」では、これまたオールマンズばり、自在にテンポ・チェンジしたりしながらの長尺ブルース・ジャムまで聞かせてくれて。盛り上がる。
でも、とにかく聞き物は聞く者の胸をしめつけるジョシュのしゃがれたヴォーカルだ。ちょっと薄いというか、荒っぽすぎる感なきにしもあらずだけれど、今どき珍しい圧倒的ブルー・アイド・ソウル・シンガーのひとりであることは間違いない。スタジオ盤でも素晴らしかった「レイン」とか、ライヴだと100倍魅力的。たまらない。
多くの観客がスタンディングでぎゅうぎゅうに詰めかけて、ステージ上で展開するアーティストたちの汗まみれのパフォーマンスに熱い大声援で応える、みたいな。今や、あの最高の喜びを体験することなど夢のまた夢。いつまた味わえることやら…。
そんな切ない思いを抱きつつ聞くしかない、とびきりホットでむちゃくちゃソウルフルなライヴ音源。楽しくもしり、寂しくもあり。泣けてくる。なんか毎日、えんえん同じこと言ってるわけですが。一日も早い収束/終息を、ね。