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Disc Review

The Walk / Bonnie Bishop ( Plan BB Music/Thirty Tigers)

ザ・ウォーク/ボニー・ビショップ

ボニーって名前の女性シンガーは何人もいて。古いところだと1930年代に活躍したボニー・ベイカーとか。1950年代にカントリー界で活躍したボニー・オーウェンスとか。あと、ボニー・タイラー姐御とか、オーストラリアのボニー・シンガーとか、日本のボニー・ピンク…は本名じゃないか(笑)。

個人的に大好きなボニーさんといえば、ボニー・レイットとか、ボニー・ブラムレットとか。そして、もうひとり、まだまだ地味な存在かもしれないけれど、2002年にレコード・デビューしてからすでにアルバム8枚リリースしている中堅どころのボニー・ビショップ。この人も好き。

テキサス州オースティンが本拠、というのが、またいい。2012年には元NRBQのアル・アンダーソンと共作した「ノット・コーズ・アイ・ウォンテッド・トゥ」を、憧れの先輩同名アーティスト、ボニー・レイットがピックアップ。アルバム『スリップストリーム』に収録した。それが“ニューヨーク・タイムズ”の年間ベスト・ソングに選ばれたり、翌年のグラミー賞に輝いたり。

ぼくが遅ればせながらボニー・ビショップという名前を知ったのもそのときだ。すでに自身のアルバムも5〜6枚は出ていたと思う。少しずつ遡りながら聞いてみて、ラフさ、クールさ、優しさなどが素敵なバランスで交錯するハスキーな歌声と、内なる闇のようなものにもうまくアプローチしてみせるソングライターとしての魅力にハマった。

ボニー・レイットの『スリップストリーム』が出た年にこちらのボニーさんの新作『フリー』ってのも出た。もっと話題になってもよさそうだったけれど、今ひとつ爆発せず。その後、大ヒットしたテレビ・シリーズ『ナッシュヴィル』に彼女が作った「ザ・ベスト・ソングズ・カム・フロム・ブロークン・ハーツ」が使われたり、ボニー・レイットが2016年のアルバム『ディグ・イン・ディープ』でさらに、こちらのボニーさんの「アンダン」って曲を取り上げたり。

いつ本格ブレイクしてもおかしくない状態が続いてはいたのだけれど。こちらのボニーさんはその後も着実にストイックな活動を継続。大学院に戻って改めて創作に関する勉強をいろいろして。2016年、デイヴ・コブをプロデューサーに迎えた久々のアルバム『エイント・フー・アイ・ワズ』で復帰。これがまたごきげんな仕上がりだった。

その後、EPとかアンプラグド系のセッション・アルバムとか他アーティストのアルバムへのゲスト参加とかを挟んで、またまた久しぶりの新作フル・アルバムが登場。今度はご存じスティーヴ・ジョーダンのプロデュースの下、またまたいい感じにアーシーで、適度にファンキーな1枚『ザ・ウォーク』を届けてくれた。

前作と基本的には同じ感触をプレゼントしてくれる1枚ではあるのだけれど、より落ち着きを増したというか。これまで以上にガードを下げて歌を届ける対象をちょっとだけ広めにとった感触もある。ゲイブ・ディクソン、エメリー・ドビンズ、レベッカ・リン・ハワードら、ナッシュヴィル系のシンガー・ソングライターたちとの共作曲が中心。ジョーダンのドラムをはじめ、ジミー・ウォレス(キーボード)、アル“ブギー”カーティ(ベース)、ライアン・サープ(ギター)らが的確にバックアップ。

曲によっては往年のリタ・クーリッジのようだったり、スーザン・テデスキのようだったり、ボニー・レイットのようだったり、頼もしい先輩たちの影響も随所に見え隠れして、それが強みか弱みか、どっちに転ぶか微妙なのかもしれないけれど。ぼくにとっては確実に強みだ。A面4曲、B面3曲…って感じの全7曲。この構成もばっちり。A面にあたる前半では「キープ・オン・ムーヴィン」とか「エヴリ・ハピネス・アンダー・ザ・サン」とかがお気に入り。

B面にあたる後半パートにより強く漂うゴスペルっぽい祝祭感にもしびれる。マグダラのマリアにチャネリングした感じの「ウィメン・アット・ザ・ウェル」とか。ファンキーさと内省的な感触とが絶妙に共存するサザン・カントリー・ソウルというか。ラストを感動的に飾る「ソング・ドント・フェイル・ミー・ナウ」は2017年にゲイブ・ディクソンがリリースした曲で、そこにもボニー・ビショップがデュエット・パートナーとしてフィーチャーされていた。今回聞けるのは、そのビショップさんヴァージョンだ。

今回こそ本格ブレイクに結びついてほしいと、心から願います。

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© 2020 Kenta Hagiwara