Disc Review

Running Out of Time / Rebecca Jade & The Cold Fact (The Redwoods Music)

ラニング・アウト・オヴ・タイム/レベッカ・ジェイド&ザ・コールド・ファクト

ニューヨーク生まれの女性シンガー、レベッカ・ジェイド。ジャズ・シンガーだった母親の影響で、子供のころからビリー・ホリデイやエラ・フィッツジェラルドなどを聞きながら育ったという。スティーヴィ・ワンダーやホイットニー・ヒューストンも大好きだったらしい。なかなかの才媛で、カリフォルニア大学バークリー校、フェニックス大学、グロスモンド大学など複数の大学に通い、そのうちグロスモンドではジャズ理論と声楽を学んでいる。

やがて本拠地をカリフォルニア州サンディエゴに移したころから、おなじみのヒット曲のカヴァーをライヴ演奏する、いわゆる“トップ40バンド”のリード・シンガーとしてプロ活動を開始したのち、2011年、カヴァーではない自分なりの音楽性を表現するためのユニット、ザ・ジェイド・エレメンツを組んでレコード・デビューを果たした。

が、その段階ではあまり大きな注目を集めることができず、以降も様々なアーティストのバック・コーラスをつとめたり、デモ・テープ・シンガー、CMシンガーなどをこなしたりしながら腕を(喉を?)磨き、2013年、新たなグループ、レベッカ・ジェイド&ザ・コールド・ファクトを結成。翌2014年にこのニュー・バンドでの初アルバムをリリースし、心機一転、新たなスタートを切った。

レベッカさんの場合、セッション・シンガーとして多彩な分野で成功を収めてこられたことからもわかる通り、実に器用な人で。曲調によって適切に歌声をコントロールできる。それが強みでもあり弱みでもあるというか。これぞという揺るがぬ個性を主張しづらいというか。そういうところがあって。

なので、2015年に出したソロ・シングル「ウェザー・ザ・ストーム」とか、2016年のEP「ページズ・オヴ・ライフ」とか、2017年にジャズ・ギタリストのピーター・スプレイグと組んだコール・ポーター作品集『プラネット・コール・ポーター』とか、そのあたりでは、もちろんそこそこ達者ではあるものの、同時にわりとクールにおさまりがちだったり。若干、こぢんまりした印象を抱かせる瞬間もなくはなかったのだけれど。

その点、コールド・ファクト名義だとわりと迷いなくソウルフルな個性を貫けるようで。2014年の初アルバムでもヴィンテージR&Bっぽい音像とタイトに編まれたグルーヴをバックに、のびのび勢いのある歌声を聞かせていた。やっぱ、バンドはいいっすね(笑)。と、そんなレベッカ・ジェイド&ザ・コールド・ファクト名義での5年ぶり、待望のセカンド・アルバムが本作だ。

レベッカさんは今なおセッション・シンガーとしてシーラ・Eやデイヴ・コズ、ラリー・グレアム、ケニー・ラティモアなどと世界中をツアーして回っており、そんな多忙な日々の中、時間を見つけながらのレコーディングだったらしい。時間がない…ってアルバム・タイトルが泣ける。が、所属するレーベル“ザ・レッドウッズ・ミュージック”の腕ききハウス・ミュージシャンもつとめるメンバーたちの頼もしい演奏をバックにいきいき躍動。ホーンを従えたファンキーなものからフュージョンっぽいものまで、気持ちいいグルーヴを楽しませてくれる。

まあ、ローカルっぽいっちゃローカルっぽくて。そのあたり、好みが分かれるかも。とはいえ、サンディエゴというところにはそれなりに独自のローカル色を確立したシーンがあるようで。その、どこか時が止まったような、垢抜けないような、少しレトロな感触も悪くない。ちょっとタイムラグがあるけれど、10月30日には国内流通盤も出るみたいです。

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