8芯二葉~雪あかりブレンド/ダージリン
90年代からずっと、ライヴに、レコーディングに、息の合った共演を繰り広げてきたDr.kyOnと佐橋佳幸によるユニット、ダージリン。彼らは2017年の11月から8曲入りの『8芯二葉』シリーズなるミニ・アルバムを速いペースで出し続けてきて。このほど完結編とも言うべき4作目がリリースされたのでピックアップさせていただきましょう。
過去、ライヴや芝居やテレビ番組などのために二人が作って演奏してきたインスト・ナンバーから毎回8曲を厳選して、半分の4曲はそのままインストとして新録、残り4曲は二人と親交のある音楽仲間を招き、歌詞を書き下ろしてもらって、歌ってもらって、ヴォーカルものへと生まれ変わらせてレコーディングする、という企画。二通りに楽しめる8曲入り。聞くところによると、最高の茶葉の中からいちばんおいしいものだけをセレクトする贅沢な紅茶の摘み方を“一芯二葉”と言うそうで。ユニット名が紅茶の名前なだけに、その摘み方にちなんで“8芯二葉”。それを年4枚、四季に合わせて出してやるぞ! という意欲的なプロジェクトだった。
まあ、実際は2017年11月の暮れに1作目が出て、つい先日、2019年の1月に4枚目が出たので、1年ちょいかかったうえに、秋がなくて、冬が2作ってことにはなったけれど。何はともあれ当初の目標はなんとか完遂。素晴らしい。
最新作の『8芯二葉~雪あかりBlend』には、ヴォーカルものへのゲストとして小川美潮、河口恭吾、佐野元春、山下久美子が参加。作詞家として鈴木慶一やKERAもクレジットされている。演奏陣も古田たかし、井上富雄、山本拓夫、三沢またろう、笠原あやの、佐野康夫、清水興、田中倫明など多彩な腕きき揃い。小川美潮独特の世界観、河口恭吾のしっとりした表現、7拍子をものともせずにグルーヴする久美子、ニューオーリンズR&Bのビートでひょうひょうとスウィングする佐野…。どの曲もごきげんだ。もちろん、歌のない、インストものもジャンル超の充実した仕上がり。
元ちとせ、高野寛、カーネーションの直枝政広、カルメン・マキ参加の1作目『8芯二葉〜WinterBlend』(2017年11月)、石橋凌、キンモクセイの伊藤俊吾、デーモン閣下、中村まり参加の『8芯二葉〜梅鶯Blend』(2018年2月)、大貫妙子、曽我部恵一、浜崎貴司、山崎まさよし参加の『8芯二葉~月団扇Blend』(2018年7月)ともども、じっくり味わい直したいものです。細野晴臣が絶妙のベース演奏を聞かせる高野寛の「春が来りゃ乙女じゃなくても夢見がち」とか、中村まりがダージリン+ラスト・ショーをバックに英語詞でスウィンギーに躍動する「Funky Tea Race」とか、屋敷豪太+高桑圭を従えて佐橋佳幸がジェイムス・テイラー役とダニー・コーチマー役を両方こなしたインスト「J. Tea」とか、過去3作にも書き切れないほどたくさんの名演が詰まっている。
全ゲスト勢揃いのライヴ・イヴェントとか、実現しないものかなぁ…。