ア・モーメンツ・ピース/ジョン・スコフィールド
ブルースやゴスペルに挑んだ09年の『パイティ・ストリート』が素晴らしくて。次作を心待ちにしていたジョン・スコフィールド。ようやく出ました。先月、本ブログの更新をサボってる間に、ですが(笑)。ひたすら“生”な手触りは前作同様ながら、路線はまたちょっと変わって、今回は必殺のバラード集的な仕上がりだ。凄腕ギタリスト、ジョンスコが、その強力な技量を一切ひけらかすことなく、アルバム全編、抑制の効いた、含蓄のあるプレイを聞かせている。すげーいいです。96年の傑作『クワイエット』あたりとイメージがだぶるかも。
自作の新曲が5曲。あとはカヴァー。ビリー・エクスタインの「アイ・ウォント・トゥ・トーク・アバウト・ユー」、キング・コール・トリオやビリー・ホリデイや、あとロック・ファンにはジェフ・マルダーの名唱で知られる「ジー・ベイビー・エイント・アイ・グッド・トゥ・ユー」、これまたおなじみのジャズ・スタンダード「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」、ガーシュインの「アイ・ラヴズ・ユー・ポーギー」、カーラ・ブレイの「ローンズ」、そしてなんとビートルズの「アイ・ウィル」など、選曲もツボを突いてます。お見事。
バラード集と言っても、そこはジョンスコ。一筋縄にはいかない。ラリー・ゴールディングス、ブライアン・ブレイド、スコット・コリーとともに奏でられる音像はスリル満点。空間と奥行きを活かしたきわめてシンプルなアンサンブルのもと、最小限の音数でめいっぱいの感情を表出してみせる。ポール・マッカートニー作の愛おしい小品「アイ・ウィル」での歌心に満ちた表現とか、けっこうやばいっす。