ブリティッシュ・ロック解釈/ベティ・ラヴェット
60歳を超えて、しかし近年大好調。デトロイトのベテラン歌姫、ベティ・ラヴェットの新作はタイトル通り、英国ロック・アーティストたちの楽曲集だ。といっても、ありがちなカヴァー・アルバムではなく。これまたタイトル通り、インタープリテイト、つまりがっちり“解釈”というか“通訳”というか、収録各曲にラヴェットならではの流儀を思い切りほどこした1枚。
たとえば、アルバムのオープニング曲、ビートルズの「ザ・ワード」とか、あのサイケ時代への扉とも言うべき楽曲の奥底に潜んでいたゴスペル・ファンキー的要素をぶりっと引き出した仕上がりになっていたり。ジョージ・ハリスンが作ってリンゴ・スターがヒットさせた「明日への願い」とかは、ジョージがこの曲を作ったときに幻視したであろうスワンプ風味を極限まで強調した仕上がりになっていたり。
むちゃくちゃ面白い。トラフィックの「ノー・タイム・トゥ・リヴ」やアニマルズの「悲しき願い」にしても、あんたたちが表現したかったのは要するにこういうことでしょ的な、実にブルージーな解釈で歌われて。しびれる。ピンク・フロイドの「ウィッシュ・ユー・ワー・ヒア」では大胆に曲の構成を変えていたり、ローリング・ストーンズの「ソルト・オヴ・ジ・アース」では歌詞が今の時代にフィットするように書き換えられていたり。そのあたりも含め、お見事。
他に取り上げられているのは、レッド・ツェッペリン、エルトン・ジョン、デレク&ザ・ドミノズ、ザ・フー、ムーディ・ブルースなどの作品。まあ、原曲を知ったうえで接したほうが驚きと感動は深いと思うけど。知らないで聞いても、ラヴェットの圧倒的な歌ぢからを堪能できるはず。