Disc Review

Together Through Life / Bob Dylan (Columbia)

トゥゲザー・スルー・ライフ/ボブ・ディラン

3泊5日の弾丸ロンドン、行ってきました。目的は先日のCRTでもお話しした通り、ボブ・ディラン。O2アリーナでの2万人規模のライヴと、翌日、観客数を3000人に絞ったラウンドハウスでのライヴと。でっかいのとちっちゃいの、両方見てきました。

詳しいことは今後、いくつかの雑誌とかに書く予定ですが。当たり前ながら、やっぱりかっこよかったです。ディランの場合、演奏曲目はオフィシャル・サイトも含め、すぐにいろいろなところにアップされるので必要ないかもしれませんが、ここにもメモとして掲載しておきますね。

2009/4/25
O2 Arena

1. Maggie's Farm
2. The Times They Are A-Changin'
3. Things Have Changed
4. Chimes Of Freedom
5. Rollin' And Tumblin'
6. The Lonesome Death Of Hattie Carroll
7. Til I Fell In Love With You
8. Workingman's Blues #2
9. Highway 61 Revisited
10. Ballad Of Hollis Brown
11. Po' Boy
12. Honest With Me
13. When The Deal Goes Down
14. Thunder On The Mountain
15. Like A Rolling Stone
(アンコール)
16. All Along The Watchtower
17. Spirit On The Water
18. Blowin' In The Wind

2009/4/26
The Roundhouse

1. Leopard-Skin Pill-Box Hat
2. Don't Think Twice, It's All Right
3. Tangled Up In Blue
4. Million Miles
5. Rollin' And Tumblin'
6. Tryin' To Get To Heaven
7. Tweedle Dee & Tweedle Dum
8. Sugar Baby
9. High Water (for Charlie Patton)
10. I Don't Believe You (She Acts Like We Never Have Met)
11. Po' Boy
12. Highway 61 Revisited
13. Ain't Talkin'
14. Summer Days
15. Like A Rolling Stone
(アンコール)
16. All Along The Watchtower
17. Spirit On The Water
18. Blowin' In The Wind

まあ、ブートでもおなじみ、ここ数ヶ月のヨーロッパ・ツアーの流れにある選曲/演奏。60~70年代の楽曲と、90年代以降の楽曲とが半々って感じ。「チャイムズ・オヴ・フリーダム」とか「ブルーにこんがらがって」とか、また聞けてうれしかったなぁ。ラウンドハウスでの少人数のライヴはレコード会社が参画していたようで、てことはライヴの翌々日にリリースされる新作アルバムのためのお披露目っぽいものになるのかな、と思っていたら、全然(笑)。普通に最近のネヴァー・エンディング・ツアーの延長にある内容だった。新作から1曲もやりませんでした。ある意味、すごい(笑)。ディランだなぁ…って感じ。

今回もディランはずっとキーボード。この形になってからもう6~7年だけに、キーボードで弾き語る形もかなりかっこよくなっていた。見え方の研究にも余念がないのでしょう。ハーモニカも吹くけれど、ギターを抱えているときとは違ってハーモニカ・ホルダーにはつけない。手で握って吹く。でも、やはりディランがハーモニカを吹くと観客は大騒ぎ。特にO2アリーナではすごかった。2曲目の「時代は変わる」でハーモニカを口元にもっていった瞬間、イチローが打席で例の構えをしたときと同じ勢いで客席から歓声とフラッシュの雨アラレ。ディラン自身もその感触をわかっていて、堂々とその役割を演じている感じ。

もちろん、おなじみの楽曲のメロディを大きく変えて、投げ捨てるようにだみ声で歌い綴るのは昨今のディラン・ライヴのまま。歌詞と曲想だけを観客めがけて投げつけてくる、みたいな。これをもって、ディランは定型から逃れるかのように走り続けている…とか評する人もいるけれど。むしろ、ディランと今のバック・バンドの面々はこのやり口でライヴを繰り返す中、どこまで余分なものをそぎ落とした新たなる“型”に到達できるか、みたいな。そんな方向性を模索しているかのようにぼくは感じたのだけれど。どうなんすかね。わかんないすね。もうちょい考えてみます。

てことで、そんな個人的な盛り上がりのもと、当然本日のピックアップ・アルバムはディランさんの新作です。全10曲中、9曲をロバート・ハンターと共作。てことで、ずいぶんと歌詞の面でライトな仕上がりのような…。もちろん、まだ歌詞をちゃんと聞き取れていないので、断定はできませんが。1曲目、先行で配信されていた「ビヨンド・ヒア・ライズ・ナッシン」なんか、いきなり冒頭から、Oh well, I love you pretty baby だもの(笑)。すごい。

本人が語っている通り、チェスとかサンとか、その辺のブルースに影響を受けた渋い楽曲と、デイヴィッド・ヒダルゴが奏でるアコーディオンが印象的なテックス・メックス系のメロディアスな曲とが交互に出てくる感じ。聞き込みがいがありそうな1枚なので、じっくり付き合いつつ、内容に深く分け入ってみようかな、と思ってます。ちなみに、アメリカのiTunesストアで売ってるヴァージョンには「レイ・レディ・レイ」のスタジオ・リハーサル・ヴァージョンがボーナス追加されてました。

あ、それからもうひとつ。マディ・ウォーターズの「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・メイク・ラヴ・トゥ・ユー」のメロディとアレンジをもろパクリした「マイ・ワイフズ・ホーム・タウン」って曲があって。当然、これもいつものディランのパクリもの同様、ソングライティング・クレジットは“ディラン/ハンター”になっていると思ったんだけど。なんと元曲の作家であるウィリー・ディクソンの名前も入っていた。びっくり。ディランはきっと、歌詞をそのまま歌ったものはメロディが違ってもカヴァー、その代わり、メロディだけパクったものはパクリではなくてオリジナル…と考えているに違いないという、われわれファンがあれこれ推測しながらたどり着いた結論を大きく揺るがすクレジットですよ、これ(笑)。

まだまだ謎だらけだな、ディランさんは。

【追記】
弾丸ツアー疲れで書き忘れてましたが、明日、4月29日、名古屋に行って中日戦を…じゃなくて(笑)、FM愛知におじゃまして生放送出演します。FM愛知の開局40周年記念番組の、たぶん午後1時あたりから2時間くらい、開局当時、60年代末~70年代前半の洋楽の特集をさせていただきます。ディラン公演のおみやげ話とかもさせていただく予定。ご近所の方は、ぜひ聞いてやってください。リクエストとかも受け付ける予定ですので、どしどし。

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