Disc Review

Reflections / Graham Nash (Rhino)

リフレクションズ/グレアム・ナッシュ

ニール・ヤングが去年監督した素晴らしいドキュメンタリー映画『デジャ・ヴ』の中に、現在のCSNYが往年のナンバー「ファインド・ザ・コスト・オヴ・フリーダム」をライヴ会場で歌うシーンがあって。その背後、ステージ奥に設置されたスクリーン上にイラク戦争で戦死した若き兵士たちの顔写真が次々と表示されていくのだけれど。スティーヴン・スティルスとニール・ヤングが生ギターでインスト・パートを演奏している間、くるりと背後を振り返ってその膨大な写真にじっと見入るグレアム・ナッシュの表情が映し出される。なんだかやけに印象的なひとこまだった。

ベトナム戦争のただ中に作られた楽曲を、世紀を超えて別の戦争が巻き起こっている今、また同じCSNYが演奏し、そのメッセージがそのまま現役のものとして通用してしまうなんて…。ナッシュの眼差しにはそんな思いが溢れているような気がした。

グレアム・ナッシュという人は、緊張感びりびりのCSNYにあって、ただひとり、いつも穏やかな感触をたたえながら佇んでいる感じで。歌声も優しくて。生真面目で。でも、きっちり頑固で。CSN結成当時、何も知らないぼくは、優しそうなぶん、この人のことちょっとナメがちだったりもしたけれど。すみません。聞き続けるうちに、この人の素晴らしさをじわじわ思い知った。今では旧作も近作も大好きだ。寡作な人だけど。ホリーズの一員としてデビューして以来40年以上。そんなグレアム・ナッシュの1967~07年までの歩みをざっくり年代順にたどる3枚組ボックスが登場した。

ホリーズ時代のモノ・ミックス3曲、CSNとCSNYがそれぞれ再結成ものも含めて14曲と5曲、クロスビー/ナッシュが12曲、キャロル・キングとのデュエットが1曲、単独名義が29曲という全64曲。うち、未発表ミックスが22曲、未発表ヴァージョンが5曲、未発表曲が6曲。なかなかに充実した内容に仕上がっている。

CSNY期の「ティーチ・ユア・チルドレン」の別ミックスとか、ソロでの「ライト・ビトウィーン・ジ・アイズ」のアコースティック・デモとか、新鮮な音源も少なくない。ラストを締めくくる07年録音の「イン・ユア・ネーム」をはじめ、未発表曲も興味深いものが多い。あと、写真家としても活動するナッシュさんだけに、初出のものを多く含む写真満載の150ページのブックレットも楽しいです。

この人の生真面目さと頑固さと優しさを40年分、たっぷり味わえるうれしい箱だ。

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