ピクチャー・ブック/ザ・キンクス
去年の暮れに輸入盤で出たキンクスのボックス・セット。紹介しそびれていたけれど、今月になってSHM-CD仕様の国内盤も出たようなので、遅ればせながら取り上げておきましょう。レイ・デイヴィス自身の監修のもと、パイ、RCA、アリスタ、ロンドン、コロムビア、コンク/グレイプヴァインと、在籍全レーベルの音源からの重要曲をほぼ年代順に収めた6枚組だ。
なにやら新作をレコーディング中との噂も駆け巡っているキンクスだけれど。今のところキンクス名義での最新オリジナル・アルバムは96年の『トゥ・ザ・ボーン』。というわけで、基本的にはそこまでの歴史をたどり直す内容だ。前身バンド時代の、まあ初出ではないものの貴重な音源とか、デビュー以降のデモ、別ミックス、別テイク、テレビ/ラジオ音源などレア/未発表曲も含む全138曲。
とはいえ、レア音源に関して、パイ時代、アリスタ時代のものはそれなりに興味深いものが入っていたりはするものの、RCA時代に関しては今いち。初出ものはもちろん、アナログ時代に出たのにいまだCD化されていないレア音源もガン無視されている。契約上の問題なのか、監修したレイ・デイヴィスの思いなのか、よくわかりませんが。ちょっと残念なことになってます。
かといって、じゃ正規音源のほうが充実しているのかと言うと、これまたたとえばパイ時代の「ワンダーボーイ」や「プラスティック・マン」、アリスタ時代の「グッド・デイ」など、収録されなかったシングル曲がけっこうあったり、「カム・ダンシング」がデモのみ収録だったり。
まあ、長い長いバンド・ヒストリーをたどるにはCD6枚でもむずかしいってことか。仕方ないっすね。でも、なんだかんだ言って、この箱は“買い”でしょう。時代とともにサウンドを大きく変化させながら独自の立ち位置で独自の活動を続けてきたキンクスだけれど、どの時代の音にも彼らならではの英国人っぽいシニカルな眼差しが変わらず、くっきり刻み込まれているという事実を再確認できるし。かっこいいバンドだな、やっぱり。