オールレディ・フリー/ザ・デレク・トラックス・バンド
3年ぶりの新作です。ライヴも含めて7作目。すげえいいです、今回も。
のっけ、ボブ・ディランの「ダウン・イン・ザ・フラッド」をお得意のアーシーなスライド・ギターをフィーチャーしながらブルージーに再構築。クラヴィネット、ウィーリッツァ、ハモンドなどを駆使するコーフィ・バーブリッジのキーボードがいい味を出している。ミステリアスなホーン・アンサンブルもいい。続くポール・ペナのカヴァー「サムシング・トゥ・メイク・ユー・ハッピー」のホットさとクールさをあわせもつグルーヴもごきげん。
他にもカヴァー曲としては、マイク・マティソンとデレクの奥様スーザン・テデスキのデュエットで展開するダン・ペン&スプーナー・オールダム作の名曲「スウィート・インスピレーション」もよかった。メンフィス風味がたまらない。デラニー&ボニーふうの節回しも聞かれる。デレクのソロもファンキーだ。そして、ビッグ・メイベルの「アイ・ノウ」のカヴァー。これもかっこいい。インドふうの音階を取り込みつつの展開に、強引ながら往年のマイク・ブルームフィールドの姿を二重写しにしてしまった。
オリジナル曲でも、南部っぽいミディアム・グルーヴにのって、やはりエリック・クラプトン人脈のひとりでもあるドイル・ブラムホール二世のヴォーカルが聞かれる「メイビー・ジス・タイム」とか、古き良きロードハウス・ロック風味あふれる「ゲット・ホワット・ユー・ディザーヴ」とか、スーザン・テデスキの切々たる歌声が印象的なアコースティック曲「バック・ホエア・アイ・スターテッド」とか、いい曲ぞろい。軽くソウル味がまぶされた爽快な三連ミディアム「デイズ・イズ・オールモスト・ゴーン」ってのも、ちょっと他の曲とは趣が違うけれど、たぶん古株アメリカン・ロック・ファンにはたまらない1曲なはず。デレクのギター・ソロも泣ける。
デレクはご存じの通り、オールマン・ブラザーズ・バンドのドラマー、ブッチ・トラックスの甥だけど。今回、4曲ほど共同プロデュースを手がけているドイル・ブラムホール二世も白人気鋭ブルースマン、先代ブラムホール(笑)の息子。二人とも新世代ってこともあり、ブルースやロックだけにとどまらない幅広いジャンルからの影響をたたえたギタリストで。伝統にばかり縛られることなく、それぞれのハイパーなセンスもそれなりに発揮しながら、のびのびと新時代のブルース・ロックを構築している感じ。いいっすね。