ザ・ソウル・オヴ・ロックンロール/ロイ・オービソン
今出ている『ミュージック・マガジン』誌でも紹介させてもらっているので、詳しくはそちらを参照していただきたいのだけれど。サン、RCA、モニュメント、MGM、アサイラム、ヴァージンなどレーベルを超えて編纂されたロイ・オービソンの4枚組アンソロジー。輸入盤は9月発売だったけれど、国内盤がようやく出たので、こちらでも…。
オービソンの箱といえば、90年に出た4枚組『伝説』ってやつがおなじみかも。あれが70曲ちょいを収録したものだったのに対し、こちらは同じ枚数に107曲+日本のみのボーナス曲「カム・バック・トゥ・ミー」を収めた太っ腹箱。未発表、デモ、ライヴなど初出音源も多数。特に、最良のソングライティング・パートナー、ジョー・メルソンとの共作曲の未発表デモの発掘はうれしい。曲名だけは知っていた「ベイビー・ドント・ストップ」のデモとか、「ラヴ・ストーム」のデモとか。泣けてきます。とはいえ、前の箱には入っていたけれど今回は入っていない曲も一部あったりして。油断はできない。悩ましい。前のも捨てられません。
オービソンが本格的にレコーディング・キャリアをスタートさせたサン・レコード在籍期より前の時代の音源からトラヴェリング・ウィルベリーズの音源や遺作『ミステリー・ガール』の収録曲まで。ロスト・ラヴ・バラードを歌わせたらこの人の右に出る者なし、その切なさとドラマチックさを共存させた唯一無二の表現力に全編通して圧倒される。聞くたびにすごさを再認識してしまう、本当にでかいパフォーマーだと思う。もう何度も何度も引用されて、耳タコだと思うけれど。87年、オービソンがロックンロール名誉の殿堂入りを果たしたとき、授賞式でブルース・スプリングスティーンが語った紹介コメントをまた引いておきましょう。
「1975年、『明日なき暴走』を作るためにスタジオ入りしたとき、ぼくはボブ・ディランのような歌詞を持つ、フィル・スペクターのようなサウンドのレコードを作りたかった。そして何よりも、ロイ・オービソンのように歌いたかった…」
ブックレットも充実。写真も興味深い。国内盤ではぼくが全108曲、がんばって曲目解説しました。よろしければ、ひとつ。